JA(農協)グループで保険事業を行う、JA共済連の会長に京都農協界のドン、中川泰宏氏が立候補することが分かった。JA京都中央会のトップを25年間務める独裁的リーダーである中川氏は、JAグループを牛耳ってきた“政治組織”であるJA全中の中家徹会長に急接近している。両氏が実権を握れば、農協組織の「老衰危機」は決定的になりそうだ。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
役員定年の延長で復活した「守旧派」
狙うは政府頼みの改革逃れ
「中川氏がJA共済連会長への立候補を宣言した。いよいよJAグループの独裁化が現実味を帯びて、グループ幹部の老害リスクが一気に高まった」
農協関係者が声を潜めて語る。1995年からJA京都中央会会長に君臨する中川氏は、トップダウンによる実行力と中央政界に通じる政治力を有してきた。その半面、「長期政権」の弊害で組織の私物化が目立っている。
中川氏が全共連会長に就任すれば、その支配力が京都から全国へ拡大し、「JAグループ全体が牛耳られる」(前出とは別の農協関係者)という懸念がJA関係者の間で広がっているのだ。
農協の全国組織は6月から7月にかけて、トップ人事を行う。全国に600ある地域農協を束ねてきた“政治組織”である「全中」の会長選挙(農協組合長らによる投票は6月18日~7月3日)を手始めに、商社機能を担う「JA全農」と「共済連」の会長が7月下旬に選出される。
現在、全国組織の事業を推進する農協は正念場を迎えている。ドル箱だった金融事業がゼロ金利政策により低収益化し、本業の農業事業を強化しなければ生き残れない大淘汰時代を迎えているからだ。
とりわけ向こう3年間は、農協が集めた貯金を農林中金が運用して農協に還元する奨励金が減ることで赤字に転落する農協が続出する見通しだ(各農協の金融事業の減益想定額については『「消える農協」はどこだ?JA赤字危険度ランキング【ワースト100】を参照』)。今回のJAグループ選挙は、その正念場の3年間にJAグループの舵取りを行うトップを決めるという、重大な意味を持っているのだ。
ところが、である。JAグループの危機感は欠如していると言わざるを得ない。