JA全農は、連結売上高6.2兆円を誇る国内最大の農業商社で、世界的にも名を知られる。だが一皮むけば、農協の老害リーダーの保身のために、資産を売却したり、農協の赤字事業を押し付けられたりするなど「田舎の論理」に振り回される存在だ。とりわけ長澤豊氏が全農会長になってからガバナンスに緩みが生じている。特集『農協の病根』(全8回)の#6では、老害リーダーに私物化される全農の危機に迫る。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
肥えるJA全農子会社から
老害リーダーが奪う延命資金
JA全農は、JAグループで商社機能を担う全国組織だ。目下のところ、地域農協は低収益化する金融事業から“本業”の農業関連事業へと軸足を移しつつある。本来ならば全農は、農協や農家からの期待が集まり、やる気と希望に満ちているはずの組織である。
しかし全農の現状は、前向きどころか「近年で最も雰囲気が荒んでいる」(全農関係者)。その原因は、会長の長澤豊氏によるパワハラや組織の私物化の疑惑にあるという。
全農には、他のJAグループ全国組織と同様に2種類のリーダーがいる。地方の農協組合長らの中から選ばれる「農家リーダー」と、プロパー職員がなる「学識経験者リーダー(学経リーダー)」だ。
これまでも長澤氏のような“たたき上げ”の農家リーダーが組織を私物化しようとたくらんだことはあったが、そのたびに“エリート”の学経リーダーがそうした動きを抑えてきた。ところが、近年の理事長(学経リーダーのトップポスト)は長澤氏に押し切られることが多いため、役職員の支持を急速に失っているというのだ。
どういうことか、具体的に見ていこう。