農協が集めた預金を運用する農林中央金庫が、運用受託額に上限を設定する方針を固め、農協などと協議を始めたことがダイヤモンド編集部の調べで分かった。マイナス金利政策の長期化で、運用益を農協に還元するビジネスモデルが限界に来ている。農林中金の運用益に依存していた農協の経営はさらに厳しくなりそうだ。特集『農協の病根』(全8回)の最終回では、事業モデルを変えられない農林中金の苦境に迫る。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
農林中金が農協に対して
「系統預け金の上限設定」を検討
農林中央金庫はJAグループのビジネスの支柱だ。農協や都道府県レベルの信連(信用農業協同組合連合会)から60兆円もの資金を預かり、その運用収益を還元している。ほとんどの農協はその運用益で農業関連事業の赤字を補填し、経営を成り立たせてきた。
農林中金は近年、「陰の司令塔」から「表の司令塔」へと格上げになった。
陰の司令塔だった頃は、JAグループの“表の代表”であるJA全中に予算を拠出し(農林中金は全中の最大のスポンサー)、役員を送り込むことで全中を裏でコントロールしていた。その後、全中が農協法で認められてきた農協への監査・指導権を失うと、JAグループ内における全中の地位が相対的に低下。一方の農林中金は、法律に基づいて農協の経営を指導できる唯一の組織になった。名実共に、JAグループの「司令塔」となったのである。
マイナス金利政策の下でも、農林中金はJAグループの盟主として痩せ我慢をして、農協に運用益を還元してきた。
ところが最近、立て続けに農協にシビアな要求を突き付けている。とりわけ今年になってから、農協への過剰サービスの終焉を通告するために二つの予防線を張った。それが、全国の農協関係者を震撼させている。