農協の病根#4Photo:Bloomberg/gettyimages

全国の農協を牛耳ってきたJA全中が、JAグループ内で追及の矢面に立たされている。きっかけはITシステム開発の失敗だ。全中は10億円もの損失を穴埋めするための費用負担を農協などに求め、猛反発を受けているのだ。特集『農協の病根』(全8回)の#4では、全中の内部資料を基に巨額損失を生んだ原因を追及するとともに、トラブル発生後の情報隠匿の事実にも迫る。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

制度疲労の農協中央会の
「無責任」と「隠蔽体質」

 農協組織のピラミッドの頂点に君臨してきたJA全中は、2014年の農協改革で農協の監査権限を剥奪され、解体の憂き目に遭った。

 それ以降、新たな「役割」を確立できずに迷走。若手職員の離職が相次ぐなど、危機にひんしている。

 そんな中で全中が、組織の制度疲労と限界を象徴する「大失敗」をやらかしていたことがダイヤモンド編集部の調べで分かった。農政運動の片手間でやっていた鳥取県の農協向けITシステム(以下、システム)開発に失敗し、10億円もの追加コストを発生させたのだ。

 実はこの失態、偶然起きたのではない。全中を含む農協中央会という“レガシー組織”が放置してきた「制度疲労」と「丸投げ体質」が、システム開発の失敗という形で顕在化したものなのだ。

 では、システム開発の失敗の要因を分析した内部資料を基に、全中やJA鳥取県中央会などJAグループの無責任ぶりを見ていこう。