コロナ禍において農協が、保険の推進目標を変えることなく、職員に前年と同じ契約実績を求めていることが分かった。民間の大手保険会社が訪問営業を自粛し、営業目標を白紙にして、前年実績で給与保証を続ける中で、農協の保険営業の積極姿勢が際立っている。特集『農協の病根』(全8回)の#7では、職員による自爆営業が問題視されてきた農協の保険事業の大元締であるJA共済連による搾取構造を暴く。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
ノルマを農協に割り振り
達成させる「殿様商売」の裏側
「押し売り経済連(JA全農)」「托鉢(たくはつ)中央会(JA全中)」「割り当て共済連(JA共済連)」「何もしない信連(JAバンク)」――。これは全国に散らばる地域農協が、JAグループの連合会(農協の銀行、保険業務などをそれぞれ専門に行う上部団体)をどのように見ているかを表現した言葉だ。
高い肥料を売り付けてくる全農、農協から徴収した限られた予算で食いつなぐ農協中央会など、上部団体の実態を表している。その中で異彩を放っているのが、共済連の「割り当て」という言葉だ。
共済連は、自らが企画・設計した保険商品の営業目標を農協に割り当てる強い力を持っている。この力を存分に行使して、業界最大手の日本生命保険に次ぐ117兆円もの長期共済保有契約高を誇るまでの存在になった。
目標の達成度もすさまじい。2018年度の契約実績は目標対比105.6%、8年連続の超過達成となっている。
なぜ共済連は思うがままに農協職員を動かし、ノルマを達成させられるのか。その秘密を内部文書からひもといていこう。