│ユースケース│
ウィズコロナ対策
まず触れておかなければならないのが、ウィズ(with)コロナ対策であろう。新型コロナウイルスの感染拡大により、リモートワークを導入する企業が一気に増えたが、新たな課題も浮き彫りになっている。
例えば、①情報連携に時間がかかり、伝達ミスが起きやすい、②遠隔会議が頻繁に開かれ業務が滞る、あるいは労働時間が増える、③システム環境や作業環境が個人によって違い、業務品質に影響する、などの課題だ。
プロセスマイニングによって、通常の業務フローとリモートによる業務フローの違いやボトルネックを特定、分析すれば、こうした課題も解決できる。
また、リモートワークでもプロセスマイニングとRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の連携を行えば、遠隔勤務先から定型業務を実行したり、業務処理をRPAでチェックしたりといったことが可能で、業務品質を担保することができる。
その他、リモートワークではチームのメンバーがそれぞれどのような作業を行っているか、チーム全体の業務の進行状況がどうなっているのかなどを俯瞰することが難しいという課題もある。その点に関してもプロセスマイニングツールを活用すれば、各担当者が自分の関係する業務がどこまで進んでいるのかをフロー上で把握することができ、迅速に対応することが可能となる。
一方、チームリーダーや経営層は、部下にヒアリングしなくても、業務プロセスの進捗状況を俯瞰することができる。
「例えば、進行中のビジネスの状況はどうなっているのか、コストや売り上げはどうか、KPI(重要業績評価指標)をいつごろ達成できそうかといった、現場の動きをリアルタイムに把握することができます」と、福沢氏は述べる。
│ユースケース│
業務改善
1. RPA導入効果の向上
数年前からRPAによる省力化、自動化に取り組む日本企業が増えているが、期待した効果を上げられずに悩んでいるケースも少なくないようだ。
共通の問題点としては、RPA導入の目標が不明確、局所的なRPA導入に終わり、組織全体に広がらない、ROI(投下資本利益率)が上がらない、などが挙げられる。
こうした問題の要因として、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングの福地史朗氏は、「日本企業では欧米に比べると属人化、ブラックボックス化している業務が多く、標準化が進んでいないことがRPAを含めたデジタル化を阻害していると考えられます」と指摘する。
プロセスマイニングとRPAを連携させると、こうした問題点の多くを解消できる可能性が高まる。プロセスマイニングによって業務フロー全般を可視化することで、RPAの導入効果が高い(自動化の余地が大きい)領域を定量的なデータで見つけ出すことができるからだ。
また、福地氏は「プロセスが可視化されると、細かい粒度で業務のQCD(品質・コスト・納期)が明らかになり、労務コスト以外にも品質やスピードを定量的に評価できるようになります」と語る。
2.システム刷新の投資効果測定
いわゆるITシステムの「2025年の崖」を克服するために、老朽化システムの刷新問題に直面している企業は多いが、その投資効果が不明なためにシステム更新を先送りしている例も多い。
例えば、業務改善を目的としたITシステム刷新の投資効果を測定するには、システム導入前と後の業務フローの差異を特定し、その差異から生じるコストの増減を算出する必要がある。
「対象業務の処理件数、作業時間などを手作業で把握することは困難ですが、プロセスマイニングはシステムログから事実に基づいたデータを抽出しますので、必要な数字を正確に把握することができます」(福地氏)
具体的にいえば、100件の購買発注伝票を印刷・送付する業務に1件当たり20分かかっていたが、伝票をウェブ上でやりとりするシステムに刷新したことで10分で完了できるようになった、といった明確な数字を算出できるのである。
3.運転資金の効率化
プロセスマイニングを資金調達や資金運用の効率化に生かすこともできる。財務に関わる業務フローを継続的にモニタリングして、ボトルネック(障害)となっている箇所を洗い出し、根本原因を発見して対処するのである。
調達・支払いプロセスを例に挙げれば、支払金額や支払日が最適かどうかをプロセスマイニングによって確認する。仕入れ先や品目で絞り込んで詳細分析すると、複数の事業拠点で同じ仕入れ先から同じ品目を購入しているといったことが発見できる。該当する品目を本社で一括して購入すれば、仕入価格を抑えたり、有利な支払条件を交渉したりすることが可能になる。