潜在的な“即戦力”を
ふるい落とさないために

 企業は採用面接で、彼ら、彼女らが大学時代にどんな活動に参加し、何を体験したかという話を具体的に聞きたがります。限られた情報と時間のなかで、企業はできる限り学生のコミュニケーション力を見出そうとしているのだと思います。

 とはいえ、それをジャッジする方法はというと、「一緒に働きたいかどうか」という面接官の経験や勘のようなものが、企業側の共通解であることが今回の取材でわかりました。

「基本的な考え方として、面接官が一緒に働きたいと思うかどうかを重視しています」(NTTデータ 人事部 藤本氏)

 しかし、数年前まではせいぜい十数社だった学生1人あたりの企業への接触数が、今では同時に100社にエントリーすることも可能な時代です。経験と勘を頼りに、就活用の予備知識で武装した学生たちを大量にふるいにかけなければならない人気企業の採用担当者にとって、その負荷は相当高まっています。

 では、企業が求めるコミュニケーション力の要素を持った学生を、より効果的に選び出す方法はないのでしょうか。

 ここで私は科学的な人材マネジメントの重要性を提起したいと思います。具体的には、人材のデータ化が必要です。

 ここでのデータ化とは、事実の収集と分析です。職場でパフォーマンスの高い社員の「行動」から、対人関係に関連するものや商談を進めるうえでプラスに働いた要素を厳密に抽出します。

 個別の「行動」を言語化し、それを採用基準に加えることによって、特定の行動ができているかという観点から明確なジャッジができます。これが、コミュニケーション力の要素を持っているか否かの指標になります。

 データに基づく人材マネジメントでは、概念レベルの抽象的な定義ではなく、行動レベルの具体的な定義を重視します。そして、現場で求められる行動は、状況や時間とともに変化していくため、その定義は定期的に修正される必要があります。

 採用の場面ではコミュニケーション力の潜在性を客観的に判断し、その後足りない部分を育成で補う仕組みをつくることが、人材を確実に資源化していくためのベースになり得ます。