人事機能を見直すことで
人材の資源化は進化する
ポイントをまとめると、企業が戦力につながるコミュニケーション力を持った学生を戦略的に採用するためには、人事の経験や勘、もしくは現場の「一緒に働きたい」という直感だけではなく、それを裏づけるデータ(ハイパフォーマンスな社員の行動特性の集積)が必要となってくるということです。
日々の業務のなかで社員がどのように振る舞い、何に取り組んでいるのか、そしてその背景にはどんな価値観や考え方があるのか。
じつは、こうした情報は公式・非公式の場で断片的には交換されています。それらの情報を積極的に収集・蓄積・分析し、絶えず更新することで個々の企業が必要とする人材像をより具体的に可視化できます。それを採用や教育に生かすことで初めて、人材を資源化し経営戦略に役立てることができるのです。
企業の方々から、大学の就活支援に関しても一言いただきました。
「大学とは、やはり、ものの見方や考え方、いわゆるリベラルアーツを身に付ける場。これをきちんとやっていただきたい。会社に入ってすぐに使えるスキルを持ってほしいとは思いません」(凸版印刷 人事部 萩原氏)
大学は、まず学問を通して現象の本質に迫る思考を鍛える、学問という知的生産の体験を本格的に提供する場に立ち返る必要がありそうです。
就活講座で行われるような職業体験は往々にして中途半端であり、かえって素直に学ぶ気持ち、白紙という部分を奪うことになりかねません。そして、大学側で行われる業界研究や自己分析に関しても、企業にとってみれば見当違いな取り組みなのではという点も、取材を通じて気づかされました。
「マスコミで働く適性を持った人をどうやって見つけるかは、私たちの課題であると思っています。ただそれと、そういう適性を持った人をつくって社会に輩出してほしいということを大学に要望していくことはまた違うと思っています」(TBS 人事部 中山氏)
次回は「キャリアデザインの罠」というテーマで、人材の資源化をどのように進めていくべきかを探っていきます。