リフィニティブが、トムソン・ロイター時代から主催する「PFI(Project Finance International)アワード」において、三井住友銀行が最高賞の「グローバル・バンク・オブ・ザ・イヤー」を獲得。30年以上にわたるプロジェクトファイナンス分野の実績と全世界をカバーする体制の構築が高く評価された。持続可能な社会の実現に向けてもその貢献に期待が高まるプロジェクトファイナンス市場の展望について、リフィニティブ・ジャパンの富田秀夫社長が、三井住友銀行の工藤禎子専務執行役員に聞いた。

三井住友銀行が中心となって約80億円のプロジェクトファイナンスによるローンを組成、2018年に完成した「ユーラス東由利原ウインドファーム」(秋田県由利本荘市)(写真提供:ユーラスエナジーホールディングス)

「PFIアワード」で
最高賞を3回受賞

(左)三井住友銀行 工藤禎子 専務執行役員 ファイナンシャル・ソリューション本部長、(右)リフィニティブ・ジャパン 富田秀夫 代表取締役社長

富田 このたびは、リフィニティブが主催する「PFI2019アワード」の最高賞であるグローバル・バンク・オブ・ザ・イヤーの受賞、おめでとうございます。本賞はプロジェクトファイナンス分野で最も長い歴史を持つ権威あるアワードで、三井住友銀行(SMBC)は過去6年間で3回最高賞を受賞されるなど、活躍ぶりが際立っています。

工藤 ありがとうございます。2019年は、前年に引き続き米中貿易摩擦問題の影響を大きく受け不安定なマーケット環境の中ではありましたが、グローバル・ソリューション・プロバイダーを目指し、常にお客さまの求めるサービスを質と量で追求した結果と考えています。

 例えば、コロンビアの第4世代道路整備プロジェクトは、当行がファイナンシャルアドバイザー(FA)を務め、ローンのサポートやヘッジコーディネーションまでを手掛けた案件であり、経済発展著しい中南米における当行のプレゼンスを体現することができたと思います。

富田 邦銀はプロジェクトファイナンスのアレンジャーとして世界で5割以上のシェアを占めており、日本のメガバンクはグローバル展開で大きくリードしています(図2参照)。今回の受賞も、SMBCの同分野に対する長年のコミットメントとグローバルプラットフォームの構築が高く評価されましたが、世界のプレーヤーの状況とSMBCのグローバル戦略についてお聞かせください。

工藤 欧米の金融機関がホームマーケットを中心に案件に取り組む中で、当行はロンドン、ニューヨーク、シンガポール、東京の4拠点で幅広く案件の組成・取り組みを行っています。

 一方、世界におけるインフラ需要の高まり、それに伴うファイナンスの多様化も進んでおり、今まではプロジェクトファイナンスに参加してこなかったノンバンクや機関投資家といった新たなプレーヤーも参入し、競争が激化している状況です。

 ただし、そうしたプレーヤーが全て、どのプロジェクトにも簡単に参加できるかというと、そうではなく、セクター・地域ごとに培われたノウハウが必要となります。当行はこのノウハウを、長い時間をかけて全世界で積み上げてきたと自負しており、そのことが他社との差別化につながる武器となっています。

 プロジェクトファイナンスを組成する上で、新しいセクターでの取り組みやリスクを取ることは非常に難しいことですが、当行のノウハウを用いて引き続きチャレンジしていきたいと考えています。時代とともに変化するお客さまのニーズに合わせて、今後も新しい地域でのファイナンス組成やアドバイザリー業務、再生可能エネルギープロジェクトの組成をはじめとしてESG(環境・社会・ガバナンス)/SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みも積極的に行っていく方針です。