ESGやSDGsへの
対応が不可欠に

富田 世界的に環境意識が高まっています(図3参照)。そうした動向にはどのように対応されていくのでしょうか。「持続可能な社会実現」に向けてのSMBCの考えをお聞かせください。

工藤 プロジェクトファインナンスでは環境や社会へ大きな影響を与えるプロジェクトが多数あり、持続可能な社会の実現に向けた方針を明確にすべく、20年4月に「ESGに関するリスクの考え方について」という方針を公表しました。これは、環境や社会へ大きな影響を与える可能性が高い事業・セクターについて、それぞれにおける当行のリスク認識・融資の方針を明確化するもので、今後も外部環境の変化に合わせて見直しを行っていく予定です。

 また、プロジェクトファイナンスは再生可能エネルギーのみならず、教育機関、病院の設立など非常に幅広い分野での貢献が可能であり、その期待も高いものであると認識しています。当行としては、国や地域事情にも考慮し、真に持続可能な社会の実現に向けた貢献が何かということにしっかりと向き合いながら取り組んでいきます。

 今年度より経営理念にも「社会課題の解決を通じ、持続可能な社会の実現に貢献する」を追加してこれを明確化するとともに、「SMBCグループ サステナビリティ宣言」と、それを実現するための10年計画である「SMBC Group GREEN×GLOBE 2030」を公表しました。

現地スタッフを起用し
積極的に育成

富田 SMBCは、日本の金融機関としてはダイバーシティーに富む多国籍人材が活躍する先進的なグローバルプラットフォームを構築されていますが、ここに至るまでのご苦労も相当なものがあったのではないですか。

工藤 多くの邦銀がバブル拡大期にプロジェクトファイナンスに参入し、市場は順調に拡大していきました。その後、バブルの崩壊で海外事業の縮小を余儀なくされたのですが、そうした中でも当行は「プロジェクトファイナンスの灯を絶やしたくない」との思いから、ローンだけにとどまることなく、FA業務を手掛けるようになったのです。これによって海外拠点の人材を雇用し続け、お客さまとの関係やノウハウを維持してきたことが、現在の優位性につながっていることは間違いありません。

 金融機関は人材が全てであり、特にプロジェクトファイナンスでは専門性の高い知見・ノウハウが求められることから、そのような人材にとって常に魅力的な組織であることが重要だと考えています。当行では現在、海外主要拠点のマネジメントには日本人もいますが、現地採用のスタッフも多数起用しています。日本人にこだわることなく、その地域をよく知っている人材がしっかりとマネジメントを行うことで、さらなるプレゼンスの向上につながるのではないかと思います。

富田 この分野では、専門知識もさることながら、国際的な経験や人脈が極めて重要だと思われますが、人事政策で配慮されている点は。

工藤 プロジェクトファイナンスでは金融知識の他に、その地域に関する専門性も非常に重要であることから、現地でのキャリア採用や若いうちからのローカルスタッフの人材育成も積極的に行っています。

 そのような人材は当然マーケットバリューも高く、同業のみならずインフラファンドなどからの引き合いも非常に多いのが実情です。定着率の向上のためにはコミュニケーションをしっかりと行い、本人の希望を的確に把握し、できる限りその希望に沿った業務に取り組んでいただくことや、貢献に見合った評価をしっかりと行うことが重要だと感じています。スタッフの希望に合わせて、短期・長期の東京本部への派遣も9年前から取り組んでおり、相互理解の向上に努めています。また、今後はテレワークや業務効率化を通じ、女性もチャレンジしやすく、活躍できる仕事環境になると考えています。