ロンドンで今年2月に開催された「PFI2019アワード」の授賞式でスピーチする三井住友銀行の今枝哲郎・取締役兼専務執行役員。
PFIアワードの詳細は、
http://www.pfiawards.com/

富田 新型コロナウイルスの感染拡大による世界のプロジェクトファイナンス市場への影響については、どうお考えですか。

工藤 新型コロナウイルスによる経済停滞により世界的に需要の減少が起きているだけでなく、例えば建設現場そのものが活動停止せざるを得なくなるなど、プロジェクトファイナンス市場への影響は小さくありません。

 コロナの影響が長期化すればするほど、既存のプロジェクトは当初計画通りの事業遂行が困難になり、また新たなプロジェクトへの取り組みは減少し、ひいてはプレーヤーも減少、マーケットは縮小傾向となります。現在はそのリスクの影響度を見極め、金融機関として経済・産業を維持していくために備えることが肝心だと考えています。

 一方、再生可能エネルギーやクリーンエネルギーのトレンドは不可逆的な流れであり、エネルギー消費量が増えないとしても、そちらにリプレースが進むため、同分野への資金ニーズは続くとみています。

富田 各国の医療体制の充実度合いが、今回のパンデミック(世界的大流行)では注目されていますが、病院建設をはじめ社会インフラの構築において、プロジェクトファイナンスの貢献がますます求められそうですね。

工藤 社会インフラの構築には、当行や民間企業のようなノウハウを持った企業の役割が非常に重要になり、金額規模も大きくなるので、プロジェクトファイナンスが果たす役割は非常に大きいものだと思います。そういった社会インフラ構築にはその国・地域の自治体の協力も不可欠で、そのため、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)やPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:公民連携)といった手法も活用し、官民で連携して社会インフラの構築を推進していくことが今後も重要になっていくでしょう。

 また、プロジェクトファイナンス分野では以前から、各国のECA(輸出信用機関)と協調し社会的要請の高い事業への融資に取り組んできた歴史があります。現在のような難しい局面においては、各国ECAとの緊密な連携によってこそ課題解決に資する事業への支援が可能になる部分も少なくなく、当行もこれまでの知見や経験を投入して価値ある貢献を行えるよう協議を重ねていきたいと考えています。

今後も成長が見込まれる
インフラ投資市場

富田 今後の市場見通しと目標、抱負についてお聞かせください。

工藤 インフラ投資に必要な金額は今後20年間だけでも1000兆円といわれるなど、まだまだ世界的な成長が予想されています。一方、つい数年前まで再生可能エネルギーの分野はまだ一つのセクターとして語ることもできないような規模でしたが、現在は世界的な潮流となるまでに拡大しています。世界は日々、急速な変化を続けており、そのスピードは加速する一方です。今後も技術革新などにより、再生可能エネルギーのような新たなセクターが登場することは容易に想像されます。

 私たちはこの長年培ってきたノウハウを生かし、プロジェクトファイナンスという枠に収まらないソリューションプロバイダーであり続けるためにも、新たなことにチャレンジし続け、常にマーケットのパイオニアでありたいと願っています。

富田 プロジェクトファイナンスは専門性に加えて、プロジェクトが世界の隅々まで広域で展開されているため、情報の収集が極めて難しいのが実情です。そうした状況の中でも、リフィニティブは、国際資本市場をカバーするグローバルメディアとして長年信頼を勝ち得てきた「PFI」「IFR」「LPC」を含め、正確かつタイムリーな情報と分析を今後も提供してまいります。本日はありがとうございました。

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