個人はその計画を実現するために組織の支援やリソースをうまく使うことが重要です。企業はそうした個人の計画が組織の資源とはかけ離れ、エネルギーが拡散しないようにマネジメントしなければなりません。キャリアデザインはその共通言語としても捉えるべきでしょう。
キャリアデザイン活用の実態
では、実際にキャリアデザインは、人事戦略としてどのように活用されているのでしょうか。いくつかの企業の取材を通じて、キャリアデザインを共有するステップをまとめてみました。
(1)入社~3年目くらいまでは、徹底した社員研修とOJTで企業のDNAや現場のやり方を習得してもらい、長期的な希望と、今やらなければならないことの融合を行う
(2)5~8年目くらいで個人の専門的技術・知識の習熟度や、リーダーシップ、マネジメントスキルなどを確認しつつ、管理者への適性や、専門職への適性などを共有する。
(3)10年目以上~管理職になる時点で、管理者としての現状スキル、課題を認識するのと同時に、一社員として、事業・職種への価値観について共有する。
それぞれの企業で共通していたことは、各ステップにおけるキャリアデザインの制度化そのものは進んでいるものの、個人と企業の意思のすりあわせは、上司と個人、個人と人事、人事と上司といった面談を重ねながら、共有の精度を上げるという、地道な現場作業に頼らざるを得ない状況であるということです。
しかし、そのような状況の中で、キャリアデザインのすりあわせを行うための面談が、個人の不満を吸い上げる場となってしまっている現実も見受けられました。キャリアデザインという制度のみが確立し、面談という人と人の関係に依存した仕組みのなかでは、すりあわせた結果を組織の競争優位を高めるための人材配置につなげることは難しいという現実があるようです。