結論:プロセスの透明化とマイクロデザインのすすめ

 競争力を高める上で、社員ひとり一人のパフォーマンスを最大化し、人材を“資源化”することが求められています。キャリアデザインを活用して、個人のモチベーションを上げつつ組織への貢献力を高めるにはどうすればよいのでしょうか。

 労働市場も変化し、社員の(組織への)帰属意識は薄れてきています。社員の意識を組織に向かわせ、個人の成長と組織の成長をすり合わせる手段としてのキャリアデザインが、一種のガス抜きになっているとしたら、企業主導のキャリアデザインには「やらされ感」が生まれます。そうなると、自分のキャリアデザインと会社が提示する機会を別々に考える仕組みが自然とできあがります。

 そうならないために、人事上の施策としてはどのようなことが考えられるでしょうか。

 一つは、キャリアデザインを行う目的やプロセスを社員に徹底周知することです。

 実はキャリアデザインを人事として活用する目的やプロセスが、社員には明確になっていないケースが多く、配属や異動において、自分のキャリアデザインの情報が使われたのかどうか、使われたとすればどのように使われたのか、がわかりません。

 これでは、真剣にキャリアデザインを考えようという気持ちにはなれないでしょう。キャリアデザインを共有する目的は、組織が個人の力を最大化することであり、そのためにはキャリアデザインについて情報収集から活用までのプロセスを公表する必要があります。

 特にプロセスの透明化は社員にとって「予見可能性の高い環境をつくる」ということにつながります。ここでいう「予見可能性」とは、起こったことを事前に予測できるかということです。予見可能性の高い環境では、社員は自分のデザインしたキャリアを実現すべく、安心して自由かつ戦略的に行動でき、そのことが高い成果を生みだすこと、ひいては組織力を高めることへつながります。