【クロージングセッション】:
実践者と紐解く、日本ならではのDX

イベント2日目のクロージングセッションでは、「実践者と紐解く、日本ならではのDX」と題し、DXの実践者2人と共に日本ならではのDXのあり方について考察した。ゲストとして登壇したのは、ビザスク共同創業者兼CEO(最高経営責任者)の端羽英子氏と三井住友銀行デジタル戦略部のラジェーンドラ マヨラン氏である。

今井 このセッションでは、リーダーとしてDX推進のど真ん中にいらっしゃるお二人をお招きしました。まず端羽さん、ビザスクのビジネスについて簡単にご紹介いただけますか。

端羽 ビザスクはビジネス領域に特化した日本最大級のナレッジプラットフォームを運営しています。ビジネスのノウハウやナレッジを提供する個人のアドバイザーと、そうした外部の知見を求めている企業のマッチングを手掛けています。知見の提供者として11万人超のアドバイザーが登録しており、マッチング実績は累計で5万7000件を超えています。2020年3月には東証マザーズ市場に上場しました。

 新規事業や経営改革、業務改善をしたいときに、それらの分野について詳しい人、豊富な経験を持つ人に1時間のインタビューで質問をしたり、アドバイスを受けたりできるプラットフォームを提供しています。一番多いのは新規事業についてのアドバイスを求めるために活用されるお客さまですが、B2B領域で想定顧客にヒアリングしてみたい、自分たちのアイデアに対して何らかのインプットが欲しいといったケースなど、ご利用目的はさまざまです。

 ビザスクが成長できた背景には、働き方改革とオープンイノベーションという2つの大きなトレンドがあります。

 働き方改革によって生産性を上げたいと考えたときに、ビザスクのサービスを活用すれば最適なアドバイザーをピンポイントで探し出すことができます。また、副業を解禁する企業が増え、人生100年時代で次のキャリアデザインを意識する人が増加する中で、アドバイザーとして他の企業の役に立ちつつ収入を得たいと考える人たちがどんどん増えています。

 一方、自分たちだけではお客さまの課題を解決できないので社外の知見や技術を生かしたオープンイノベーションを推進しなくてはいけない、そこではデジタルの知見も必要だとなったとき、ビザスクを積極的に活用していただいています。

 11万人超のアドバイザーのうち7割が国内外の法人に在籍しており、上場・非上場を含めてあらゆる業界・業種をカバーしています。所属企業や職種、経歴などを登録していただくと、AIも活用した検索エンジンが相談を持ち掛けた企業とのマッチングを行います。

 当社の社員の3分の1はエンジニアで、さまざまなシステムを自社で開発し、プラットフォームを磨き上げています。

今井 ビザスクのプラットフォームを通じて、自分の知識や経験がいろいろな会社の役に立つことが分かれば、自分の価値を再認識できて、元気になる人が増えるでしょうね。特にセカンドキャリアを考えているシニア層は、そうだと思います。

端羽 そうですね。アドバイザーの方々にアンケートを取ると、登録するときの動機として90%の人が「知見を生かして貢献したい」を挙げています。これは、「収入を得たい」という回答を上回っています。

ビザスク共同創業者兼CEO(最高経営責任者)の端羽英子氏

今井 ビザスクでは社員の3分の1がエンジニアとのことですが、欧米でDXが進む中で増えたものは何かというと、社内のIT人材です。つまり、システムの開発者とユーザーの両方が社内にいて、顧客の声を聞きながら短期間でシステムを開発したり、アップデートしたりすることができる。顧客にとって本当に役に立つアジャイル開発ができる人材と仕組みが社内にあるとDXを進めやすくなります。

端羽 「ビザスクはウェブサービスの会社だから、アジャイルな文化をつくれるんでしょ」とよく言われますが、事業部門には銀行など伝統的な大企業から転職してきた人もたくさんいます。

 そういう人たちでも、日常的にエンジニアと一緒に仕事をしていると、数カ月もたてば「このツールをもっと使い勝手よくできないか」とか、「検索エンジンの表示の順番をこうした方がいいんじゃないか」とか、エンジニアと活発に議論するようになります。

今井 自分たちでどんどん新しいことをやりながらスキルアップしていくと、さらに次の目標が見えてきて、進化します。私が1年半ほど前に初めて端羽さんにお目にかかったとき、ビザスクの登録アドバイザーは5万人でしたが、いまや11万人超。進化の速さを感じます。