アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)2020」は、企業や団体がつくるブランデッドムービーの部門「BRANDED SHORTS」の上映・表彰式を、9月23日に、東京港区の赤坂インターシティコンファレンスthe AIRで開催した。ブランデッドムービーとは、企業や商品のブランディングを目的として作られたショートフィルムのことだ。SSFF & ASIAの別所哲也代表と、スポンサー企業として参加している日鉄興和不動産の今泉泰彦代表取締役社長が、企業にとってブランデッドムービーが果たす役割や赤坂エリアで映画祭を開催する意味などを語り合った。

広告と映画が寄り添ったブランデッドムービー

1999年から日本発の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル」を主宰しているのが別所哲也代表だ。別所代表とショートフィルムとの出会いは、20代でハリウッド映画デビューした1990年にさかのぼる。

別所 私は20代でハリウッド映画デビュー(1990年の日米合作映画『クライシス2050』)しました。その後、日本と米国を行き来する中で、現地でことあるごとに誘われたのが、ショートフィルム(短編映画)の上映会でした。当時は長編映画の俳優として活動していたので、正直、興味は湧きませんでした。しかし、97年にソニー・ピクチャーズのスタジオで見た10本のショートフィルムに衝撃を受けたのです。短い映画なのですが、そこには無限の宇宙があり、とりこになりました。その翌年1月に、ロバート・レッドフォードが主催する「サンダンス映画祭」に行ってみると、若手の映像作家による、まるで画家のデッサン画のような16ミリ、35ミリフィルム作品がたくさん上映されていました。

9月23日に開催された「ショートショートフィルム フェスティバル & アジア 2020 BRANDED SHORTS」ネスレシアター最新ブランデッドムービープレミア発表会および授賞式&審査員トークセッション。1部では、ネスレ日本の最新ブランデッドムービー『この場所の香り』が、無料で楽しめるウェブ映画館「ネスレシアター」公開に先駆けて上映され、監督や俳優陣が登壇。2部では「Sunrise CineAD Award」「Branded Shorts of the Year」授賞式他が行われた

ショートフィルムに魅せられた別所代表は、ショートフィルムとインターネットとの親和性にいち早く気付き、日本に広めようとしたのだが、当時はまったく相手にされなかったという。

別所 くしくも世の中は(インターネット接続機能が搭載された)ウィンドウズ95、98が発売され、シリコンバレーの人たちは動画配信に注目していました。「来るべき時代は、ネットで配信されるショートフィルムのような短尺のエンターテインメントコンテンツが主人公に躍り出る」。そんな話を聞いていましたから、サンダンス映画祭でショートフィルム作品に触れたとき、胸が騒いだのです。これを日本でも広めたいと思ったのですが、当時は「短編映画なんて8ミリで撮った実験映画だろ」なんて言われてまったく相手にされなかった。それなら「僕が世界から感動を持ってくる!」と、99年6月4日、原宿の表参道で、現在の「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」につながる映画祭を始めました。

 ブランデッドムービーの系譜でいうと、2001年にBMW Filmsが米国で大々的にダイレクトマーケティングツールとして活用したのが、本格的なブランデッドムービーの夜明けです。07~08年あたりで、日本でもテレビコマーシャルの最後に「続きはウェブで」と、ウェブに誘導するようになり、10年前後にブランデッドムービーが増えてきました。日本のブランデッドムービーの先駆けはネスレ日本でしたね。

映画祭では、ブランデッドムービーを広告としてではなく、映画として評価する。それはなぜなのか。

別所 広告と映画がジャンルを超えて寄り添い始めたためです。音楽を宣伝するためのミュージックビデオやトリセツムービーが受け入れられているように、広告がスペックを語るだけでは企業の思いが消費者に伝わらず、シネマチックに変化していく必要があるのです。クリエーターサイドの視点では、広告の中にある物語性とか映画的要素を評価されることに喜びを感じているのではないでしょうか。

 僕は主宰者であるため応募作品を評価する立場にはありませんが、あえて言えば映画祭としては、広告性を議論するのではなく、作品としての物語性、クライアントが求めていた哲学やメッセージがきちんと込められているか、それがどう観客に伝わったのかを重視しています。

日鉄興和不動産は別所代表の活動にスポンサー企業として参加し、映画祭では会場として自社の赤坂インターシティAIRを提供している。今泉社長はブランデッドムービーをどう捉えているのだろう。

今泉 私どもはスポンサーではありますが、別所代表のショートフィルムの活動に共感を覚え、パートナーとしての気持ちでその活動を応援させていただいています。私は前職の金融機関時代にさまざまな業界を担当させていただきました。その中でも2000年前後に情報通信業界を担当し、インターネットの台頭を目撃したときの印象は強烈でした。そのとき感じたのは、インターネットの強みは、国籍や年齢に関係なく、あらゆる人間がアクセスできるネットワークであるということです。インターネットは、資金力が乏しくても、いろいろな発信ができる。ショートフィルムは、こういったインターネットと非常に親和性が高い表現手段だと思います。

 昔のCMは商品を売るために商品名や社名を連呼することが常でしたが、ブランデッドムービーでは企業の世界観や目指すところをまず掲げて、消費者に物語性を持って語り掛ける手法を取っており、これからの時代に欠かせないものになると前々から興味を持っていました。そんなとき、縁あって別所代表との接点が生まれたのです。