赤坂エリアに息づく新しい文化の萌芽
今泉泰彦 代表取締役社長
日鉄興和不動産は18年11月から12月にかけて、品川インターシティ(東京都港区)で「品川インターシティクリスマスイルミネーション」を開催した。野外シアターの「シナガワクリスマスシネマウィーク(Shinagawa Xmas Cinema Week)」で上映したのが、11本のショートフィルムだった。この企画は、日鉄興和不動産とSSFF & ASIA双方から持ち上がったもので、両者の思いが一致して形になったのだという。
今泉 過去、企業は利益を上げること、商品を売ることが最大の使命とされていましたが、今はSDGs(持続可能な開発目標)、あるいはCSR(企業の社会的責任)の考え方にあるように、社会やコミュニティーや地域にいかに貢献していくかということも企業の重要な使命です。別所代表から頂いた企画は、当社の考えや思想や世界観を発信したいという考えにぴったり一致しました。
品川インターシティでの縁から、日鉄興和不動産は19年よりSSFF & ASIAに協賛し、「BRANDED SHORTS」の会場として、赤坂インターシティAIR内の赤坂インターシティコンファレンスを提供している。コロナ禍に見舞われた20年にも、引き続き赤坂インターシティコンファレンスを会場として提供した(作品はネット上でも公開)。赤坂(東京都港区)の地で映画祭が開催されたことも、大きな意義があると今泉社長は捉えている。
今泉 日本の首都・東京が、ニューヨークに次いで世界第2位の都市といわれた時代もありました。今は上海、シンガポールというようなアジアの都市の成長が著しい。東京の国際競争力を高めるためには、魅力ある都市づくりが重要です。
当社が開発に力を入れている港区は、東京の中でもユニークなエリアです。一言で表せば「国際性豊かなエリア」。日本には外国大使館が150強ありますが、そのうち88の大使館が港区に立地しています。外資系企業は日本に約3200社あり、東京には約2400社が本社を置き、そのうちの800社が港区に本社を構えています。港区、そして赤坂は東京における海外に向かっての“顔”です。このエリアを、今まで以上に活性化させて国内外に発信していくことが当社のミッションと考えています。
別所代表も赤坂は特別なエリアであると捉えている。
別所哲也 代表
パシフィックボイス代表取締役
別所 映画祭は集積回路であり「価値付け機関」(ランキングプラットフォーム)です。これは、僕が米国で俳優をしていたときに顧問弁護士から教えてもらった言葉で、「日本はランキングビジネス、オークションビジネス、アーカイブビジネスが下手。この3つを発展させていくことがこれからの日本には必要だ」と。まだ20代の俳優に、米国で大掛かりなエンターテインメントビジネスを手掛けている人が教えてくれたのです。そのときはちんぷんかんぷんだったのですが、日本に戻ってきて、世界は「日本は何に価値を置くのか」、例えば、仕事の丁寧さや細部へのこだわり、引き算というか削りの美学みたいなものについて知りたがっていると感じるようになり、その価値をどう発信していくかが映画祭の使命であり、表現する俳優の仕事でもあると思うようになりました。
赤坂は、今も高級料亭が並び、芸者衆がいる花柳界がある街で、芸事をはじめトラディショナルなエンターテインメントを生み、成熟させてきました。そしてこれからは、文化を発信していく“コア東京”だと思っています。経済・政治・文化の中心地にも等しい距離でアクセスできる。エンターテインメントには欠かせない商談、政談(政治を語る場所)、文談(文化を語り合う場所)ができるのが赤坂だと思うのです。
今泉 赤坂は私どもにとっての地元。その魅力は私が説明しなければいけないことでしたね(笑)。赤坂エリアには、国際性と共に、路地裏に漂う江戸情緒や日本らしいゆかしさが残っています。
当社は、そんな赤坂エリアのコミュニティーの一員として、氷川祭に参加し、神輿巡行時には赤坂インターシティ前に神酒所を設置、また駅周辺の清掃活動も積極的に行い、毎年秋に行われる赤坂エリアに音楽があふれる「ARK Hills Music Week」では、赤坂インターシティAIRや赤坂インターシティでロビーコンサートを実施しています。今後も、エリア内の企業や施設との協業を通じて、パートナーシップを育みながら、文化が根差す街・赤坂のイメージアップ、発信に努めていくつもりです。SSFF & ASIAへの協賛も、そうした活動の一環です。
元々当社のバックボーンは、日本製鉄と日本興業銀行(現みずほ銀行)です。世のため人のために役立つことに生真面目に取り組むというDNAを受け継いできています。しかし、世の中が変化し、多様性を受け入れて新しい価値観を見いだすことが求められている今は、過去からの伝統に、遊び心も少し取り入れて、新たなものを発信していくようなことができたらと考えています。
その取り組みの一環として、本年9月にベンチャーキャピタルと共同で、スタートアップ企業を対象としたインキュベーションオフィス「SPROUND(スプラウンド)」を品川インターシティに開業しました。ここから世界に羽ばたくベンチャー企業が育っていくことを期待しています。また、リモートワークやオンラインミーティングに対応できるオフィス環境を整えた会員制シェアオフィス 「WAW(ワウ)」シリーズを展開することで、さまざまな企業の働き方改革推進をサポートしていきたいと考えています。
建物の構造や外観などハード面は法令などの制限によりやれることは限られますが、安心・安全に十分配慮した上で、ソフト面での工夫を行うことで新しい時代にふさわしい場を提供したいと考えています。こういった取り組みを通じて赤坂の地から新たな価値観を発信していきたいと考えています。