人々の暮らしを支える浄水場などの公共施設や、石油、発電などのプラント設備、クリーンルームやデータセンター、医療・福祉施設などの空調設備、工場やオフィスビルなどの内線電気、建築、送電、情報通信といったあらゆる工事を手掛ける総合設備企業、富士古河E&Cは、コロナ禍で企業が大きな影響を受ける中、2020年3月期に営業利益で過去最高を達成した。同社の盤石な経営基盤と成長性、働き方改革への取り組みから求める人材像まで、日下高社長が余すところなく語る。
コロナ禍でも最高益を達成する
盤石の経営基盤
前田 2020年は新型コロナウイルスの感染拡大で、日本を含めて世界経済が大きな影響を受けています。直近の経営環境はいかがでしょうか。
日下 20年4〜6月の第1四半期でみると、建設業全体で平均10〜15%くらいの減益が予想されており、当社もその範囲内に収まっています。大きな影響を受けている業界と比べれば、利益はきちんと出せている状況です。コロナ禍で、先延ばしにされていた企業の設備投資が、第2四半期から徐々に再開されてきている印象です。
前田 コロナ禍でも揺るがない経営基盤はどこから来ているのですか。
日下 創業が1923年と長い歴史を持つ当社は、戦前の古河財閥の流れをくむ名門企業、富士電機と古河電工のグループ企業3社が09年に統合して新たな歩みをスタートしました。その有形無形の資産は大きいですね。
重電メーカーである富士電機は、鉄鋼、機械、化学メーカーなどのプラント設備を担い、当社はその電気設備工事を担当してきました。一方、電力・情報通信ケーブルのメーカーである古河電工が担ってきた電力・通信関連の工事で当社は、電気設備工事やケーブル配線工事などを請け負ってきました。このような施工実績の圧倒的なストックや、技術・ノウハウという無形の資産の蓄積によって、われわれはお客さまと一体となってソリューションを考え、提案することができる。これが当社の一番の強みです。
それ故に参入障壁が高く、新興企業が入ってくる余地は少ないといえます。また、日本のインフラ設備は総じて老朽化しており、ちょうど更新の時期に来ている。それも事業の安定に寄与しています。
前田 富士電機、古河電工という名門企業のグループ企業として蓄積してきた豊富なストック、すなわち、富士古河E&Cが手掛けてきた社会・産業インフラの設備から、今後も安定的に更新需要が見込める。それが経営基盤を盤石にしているのですね。
日下 名門企業のグループ企業だからといって安泰だったわけではありません。08年のリーマンショック後に経営環境が厳しくなり、富士電機と古河電工傘下の設備工事企業3社が統合して当社が誕生したのですが、10年度は連結売上高が約550億円で、営業利益はほとんどない状況でした。
11年の東日本大震災を機にエネルギー政策が見直され太陽光発電設備の需要が高まったこと、アベノミクスによる投資喚起策なども追い風となり、その後の10年は右肩上がりで成長し、20年3月期には営業利益で過去最高を達成することができました。18年度から23年度までの5年間の中期経営計画では、23年度に連結売上高1000億円、営業利益60億円の達成を目標に掲げています。今期のコロナの影響を加味しても、到達できると考えています。