アイデアの卵をふ化させるためには、インキュベーターの支援と資金の両方が必要になる。湯﨑知事は、企業だけでなく、学生も含めた個人にまで広く門戸を開いたことを踏まえて、「応募の事前相談から、採択後の伴走支援まで手厚いアクセラレーションプログラムが利用できます」と語り、パートナーとなるインキュベーターとして、県の施策に関わり実績のある2社、ベンチャーキャピタル事業などを手掛けるサムライインキュベートの榊原健太郎代表取締役と、SES(システム・エンジニアリング・サービス)を中心に事業展開しているワクトの星山雄史取締役兼COOを紹介した。
榊原代表は、「ベンチャーキャピタルとして蓄積した日本の知見はもちろん、当社が関わったイスラエル、アフリカなどの海外の知見も生かして、日本発の世界に通用するビジネスをつくりたい」と話し、「起業家が失敗しやすいところは仮説検証です。それを私たちが手取り足取りサポートします。マーケットに受け入れられるかどうかの確認も行います」と役割を語った。
星山取締役兼COOは、「私の起業経験を踏まえて、アクセラレーションプログラムのメンタリングの部分で支援をしたい」としつつ、「生まれたシーズに横串を通してコミュニケーションを取り、競争することで事業が成長し、それが地域の磁力となって人材が集積し、社会イノベーションシーズとなる。このような循環型エコシステムを作りたい」という抱負を語った。
実証実験支援費も潤沢に用意されている。1件の採択アイデアに対して1300万円を上限とし、20年度に30件の採択を予定。県外企業が選ばれた場合、広島での実証にかかる拠点の賃借料や交通費・宿泊費などを含め、最大1000万円の上限額の中で実費を補助する「ひろしまオフィスプランニング助成事業『ちょっと広島県』」も使える。
米国のベンチャーキャピタルで学び、起業家としてIPO(株式公開)の経験もある湯﨑知事は「ベンチャーが陥りやすいトラップは、何でも自分でやろうとするところ。パートナーのサポートを受けることができればチャレンジしやすいし、大きく伸びていくことができます」と「D-EGGS PROJECT」の活用を訴えた。そして、「イノベーション立県」の実現を目指すためにも、「広島を舞台に常識を再定義するアイデアやソリューションが集まることを期待しています。本事業のような機会を利用して若い卵からユニコーン(高い成長が見込まれるベンチャー企業)が生まれるとうれしい」と結んだ。