ベンチャーキャピタルとITエンジニアが事業化まで支援
D-EGGS PROJECTの運営は県の担当者と、アイデアが「種」の状態にある創業期の起業家から出資・成長支援するベンチャーキャピタル「サムライインキュベート」、ITエンジニアのプロフェッショナル集団である「ワクト」、広報プラットフォーマー「DIA」(第一エージェンシー)の4者で行う。
山中良太 ディレクター
サムライインキュベートの山中良太ディレクターは、科学技術の革新という抜本的な手法で社会課題を解決する「ディープテック」というキーワードを使って、プロジェクトに寄せる思いを次のように説明する。
「GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)は、スマートフォンの画面上で動くソフトウエアにより、私たちの生活の利便性を高めました。次は、社会課題を解決していくフェーズです。分かりやすい例が自動車分野。今販売されている新車にはADAS(先進運転支援システム)が搭載されていますが、ソフトウエア技術が中心となっており、安全運転の支援にとどまっています。ディープテックは、ハードウエア技術とソフトウエア技術が一体になった自動運転の世界を指し、交通弱者の移動というような社会課題を本質的に解決します。広島にはハードウエアを作る技術の蓄積があるので、ソフトウエアと組み合わせることで、広島発のディープテックを実現する可能性を秘めています」
佐藤建明 マネージャー
広島県出身のサムライインキュベートの佐藤建明マネージャーは、人口約275万人という県の規模は、ディープテックの社会実装に向けた実証実験にも適しているとした上で、広島県人のチャレンジ精神に期待する。
「私は原爆ドームのすぐそばで育ったのですが、広島は今年原爆投下から75年。戦後、広島の人たちは廃虚の中から不屈の精神で立ち上がり、挑戦を続けて現在の広島の繁栄を創り上げました。コロナ禍によって日常生活は一変しましたが、このプロジェクトをきっかけに、広島から世界へ新しいプロダクトや製品を発信してほしいと思います」
そして佐藤マネージャーは、こんな例を挙げた。
「テクノロジーは距離のハンデをなくしました。テレワークによりどこにいても仕事ができるし、情報を発信することができます。ただ、現状のテレワークのシステムではまだ抜け落ちてしまう情報や捉え切れない感情の動きなどがあるので、それを可視化する方法、よりリアルに近づける方法がSANDBOXで見つかるといいと思います」
星山雄史 取締役 兼 COO
広島が持つハードウエアと、応募者が発案したソフトウエアをつなぐための支援を行うワクトの星山雄史取締役兼COOは、「起案から実証実験に至るまで、応募者の方をしっかりとサポートしていきたい」と意気込みを語る。
「今回のプロジェクトでは、高度なものから身近なものまで幅広いアイデアが集まるでしょう。1人で全てを開発するのもいいのですが、チームで開発するとより事業化の可能性が高まります。広島が持つアセットや当社の2000社を超えるパートナーの力も活用しながら、それぞれのアイデアに適した技術をマッチングさせ、チームをつくって、実証実験までの支援をしたいと思います」
優れたアイデアがあっても、テクノロジーの裏付けがなければ実現は難しくなる。ワクトは、応募者が求めるサポートを行いつつ、実証実験まで伴走する。