挑戦失敗のリスクは行政が何度でも負う
金田典子 地域産業デジタル化推進担当課長
そもそも「ひろしまSANDBOX」とは、どのようなプロジェクトなのか。「D-EGGS PROJECT」誕生には、どのような背景があったのか。実働部隊となる県とサムライインキュベート、ワクトのメンバーに話を聞いた。
広島県商工労働局イノベーション推進チームの金田典子・地域産業デジタル化推進担当課長は、ひろしまSANDBOXの狙いについてこう語る。
「SANDBOXを直訳すると、子どもが遊ぶ『砂場』です。子どもたちが砂場に集まって何かを作っては壊し、作っては壊して遊ぶように、素晴らしいアイデアを持つ人に何度でも試行錯誤ができる場を提供するという思いを込めました。試行錯誤には失敗が付きもので、それがリスクとなるため、『失敗してもいい』(リスクは行政が負う)というメッセージを発信しています」
失敗を許容するプロジェクトを立ち上げた背景には、AI、IoT、ビッグデータを3本柱とする第4次産業革命に乗り遅れるかもしれないという危機感があった。
「広島県はマツダをはじめとする製造業が蓄積した基盤が強みですが、デジタル分野、IT分野の技術・知見は十分とはいえず、人材も不足しています。第4次産業革命に対応していくためには、製造業(ハードウエア)とIT技術(ソフトウエア)を融合させた新しいプロダクトやサービスを生み出す必要があったのです」(金田担当課長)
プロジェクトには予想を超える反響があり、89件の応募の中から9件の実証実験が行われている。
ニューノーマルに適応したアイデアを募集
ところが3年目に入って社会の様相が激変した。新型コロナウイルスの感染拡大により日常が大きく変化し、ニューノーマル(新しい生活様式)に適応していくための革新的なソリューションが求められるようになったのだ。そこで県はひろしまSANDBOXに「D-EGGS PROJECT」を創設した。このプロジェクトの狙いは、コロナ禍によって顕著化した諸課題をテクノロジーによって解決するアイデアを全国から募集することで、ニューノーマルに適応する消費者視点の製品・アプリ、サービスなどのソリューションを生み出すところにある。