「多くの法律事務所はデジタル化で後れを取っている」。法律事務所向けのクラウド案件管理システム「LEALA」(レアラ)を開発した株式会社レアラの共同創業者、大橋良二弁護士はそう警鐘を鳴らす。政府の目指す裁判手続のIT化を座視している余裕はない。法曹界にも積極的なデジタル変革(DX)推進が求められているのだ。
共同創業者/取締役
大橋良二氏
一新総合法律事務所 理事、東京事務所 所長。東京弁護士会所属弁護士。一新総合事務所は、新潟県内5拠点のほか、東京、長野、群馬にも事務所を構える。2016年の東京進出をきっかけに、Salesforceを導入、現在LEALAを活用中
日本でも、民事訴訟手続においてITを活用する、裁判手続のIT化が計画されている。3段階で進められているIT化のフェーズ1として、2020年には裁判所と弁護士をオンラインでつなぎ争点整理などを行うため、Microsoft TeamsによるWeb会議が導入された。コロナ禍の影響もあって利用が伸びており、2021年1月現在、知的財産高等裁判所および全国の地方裁判所本庁(50庁)で運用されている。今後は関連法の改正などを行い、最終的には2025年度までに、オンラインで裁判の申立や記録の電子化などを行う、全面的なIT化を目指すことが明らかにされている。
こうした情勢に対応するためにも、また弁護士としてしっかりとした情報収集を行い顧客にフィードバックするためにも、ITツールが不可欠と語る大橋氏は、デジタル化に対して問題意識が低い弁護士が多いのではないかと危機感を募らせている。
「今はまだ裁判所は紙ベースです。コミュニケーションも電話やFAX、メールで事足りていることが多いので、課題意識が持ちにくいのかもしれません。けれどそれでは、弁護士が相対的に世の中から遅れていくのではないかという感触があります」(大橋氏)
大量の紙と場所の縛りから脱して
時間を有効に使う
だが、多くの弁護士を苦しめているのもまた大量の「紙」だ。裁判のたびに、数千ページに及ぶ紙資料を印刷してファイルし、重いキャリーバッグを転がして裁判所へ向かうことになる。検索性も悪く、目的の記載を見つけるためにはかなりの時間と手間を要する。この効率の悪さが、弁護士業を激務にしている一因とも言える。
大橋氏はまた、一般企業との差についても憂慮している。たとえば、ビジネスチャットツールを導入している企業も多い中、弁護士はメールでしか連絡できないのかと言われたことがあるという。利益相反チェックをメールで行っている事務所が少なからずあるが、それでは時間がかかり、依頼者を待たせてしまう。顧客満足度を重視する一般企業であれば、看過できない問題だ。