2020年12月15日、ダイヤモンド・オンラインとKDDIはWebセミナー「激動の2020年がヒントになる ~いまこそ”真のDX加速”~」を開催した。新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行は、私たちの働き方をわずかな期間で大きく変えた。デジタル技術を活用した「テレワーク」という働き方が当たり前になり、どこにいてもチームのメンバーとコミュニケーションを取りながら働くことが当たり前になった。COVID-19が収束した後、私たちの働き方はどうなるのか、企業はどうすれば成長していけるのか。東京大学名誉教授、学習院大学国際社会科学部教授の伊藤元重氏が語った。
過去の教訓を生かして、金融危機は抑え込めた
日本に限らず、世界では5~10年に1度、金融危機に見舞われている。伊藤教授はまずそこから話し始めた。日本を例にとると、1990年代のバブルの崩壊、あるいは1997年末に大手証券会社の倒産に端を発する金融危機、2008年には戦後最大の金融危機ともいわれるリーマンショックがアメリカで起き、2011年には東日本大震災と、20年ほどの間に4度の金融危機が起きている。
COVID-19の感染拡大当初は、「2020年の世界の経済成長率が、世界大恐慌(1929年~)以来最悪の状況になるだろうという予測が国際機関から出ていた」(伊藤教授)ほど、金融については悲観的に見る関係者がほとんどだった。実際に2020年3~4月に株式市場が大きく崩れ、債券市場も大きく値を下げた。
しかし現在、世界的な金融危機は起きていない。伊藤教授はこの現象について、「過去の苦い教訓を生かして、日本銀行、アメリカ連邦準備銀行(Federal Reserve Bank、FRB)などの中央銀行が、かつてないほど大胆な金融緩和や資金注入に踏み切ったから」と解説した。
COVID-19が、社会のデジタル化を急加速させた
一方で、COVID-19による経済活動への影響は続いている。COVID-19の感染拡大前は、政府がいくら「働き方改革」や「柔軟な働き方」とかけ声をかけても、ほとんどの日本企業は“従業員全員が毎日オフィスに出社する働き方”を崩す気配がなかったが、感染拡大後、外出もままならなくなると、日本企業はあらゆるサービスやツールを活用し、驚くほどの短期間で、在宅でテレワークを基本とする働き方に移行してみせた。さらにテレワークの方が生産性が上がる従業員が多いというおまけまで付いてきた。伊藤教授が「危機が起こる前から底流で起きていたさまざまな変化が、危機によって一気に加速することがある」と指摘していたことが、まさに現実になったのだ。