2020年は日本企業の「DX元年」だった~日本企業が成長できるDXとは?~

【イベントリポート】激動の2020年がヒントになる ~いまこそ“真のDX加速”~

パネルディスカッション「DXはなぜ進まない?」

 伊藤教授の講演に続いて、KDDI株式会社 執行役員 サービス企画開発本部 副本部長の丸田徹氏を交えてのパネルディスカッションを開催した。テーマは「DXはなぜ進まない? 日本企業の打開策とは」だ。

右からKDDIサービス企画開発本部丸田徹副本部長、伊藤元重教授、モデレーターのダイヤモンド社デジタルビジネス局コンテンツ企画開発部 前田剛副部長。右からKDDIサービス企画開発本部丸田徹副本部長、伊藤元重教授、モデレーターのダイヤモンド社デジタルビジネス局コンテンツ企画開発部 前田剛副部長。

 伊藤教授が講演で語ったように、日本企業のDXはまだまだ遅れている。この原因について丸田氏は「DXは、今までやっていた事業にイノベーションを起こしていくということ。実際の事業のあり方、会社の事業のやり方を全般的に変えていくことになる。成功させるには、強力な推進力が必要だ。この推進力を会社がきちんと与えているか。経営層からのお墨付きがあるのか。そういったところが一つ大きな要素だと感じる」と答えた。

 KDDIは、2018年9月に虎ノ門に「KDDI DIGITAL GATE」という施設を開設している。丸田氏が指摘するのは、トップダウンでDXを行うことの大切さだ。「KDDI DIGITAL GATEは、お客さまとともにDXを考え、推進していく場ですが、これまでのプロジェクトを見ると『DX担当が来ました』という企業と、『経営層が来ました』という企業では、その後の結果に大きな差が出ているのです」と明かした。前者の「DX担当が来ました」という経営層のコミットメントが小さいプロジェクトはなかなか前に進まない。あるいは、狭い範囲の改善にとどまり、今までのやり方を根底から覆すようなイノベーションにはつながりにくいのだという。

 伊藤教授は、「日本の経済とか企業の強さが逆にあだになっている」と指摘した。日本の強さとは例えば「現場力」だ。「日本は現場力が非常に強いといわれる。問題があっても、現場で片付けてしまう。経営者から見れば非常に便利だ。そのやり方で儲かっている企業が『デジタルになったら変わるかもしれない』と思ったとしても、そう簡単に今までのやり方を捨てることはできないだろう」と伊藤教授は見ている。

 しかし“現場で問題を解決できればそれが便利”なのは、欧米でも同じことだ。「アメリカではそのような問題に対してデジタル技術を活用して解決することに挑むベンチャーやスタートアップが現れるところが、日本と大きく異なる。つまり、今までのやり方を脅かすベンチャーが出現するということだ。そして、新たに現れたベンチャーのやり方が当たり前になり、デジタルで問題を解決する企業がどんどん増えていく」と伊藤教授は説明した。

IoTと5Gで、リアルデータを収集し、分析

 講演で伊藤教授は、現実を記録したデータである「リアルデータ」にこそ日本企業にとってのチャンスがあると語っていた。医療や工場、物流など、さまざまな現場でセンサーなどを活用して業務効率に関わるデータを測定し、集める。集積した膨大なデータを分析し、業務のよりよいやり方を見付けるなど、業務効率向上にもつながるデータだ。

 丸田氏は、伊藤教授が講演で語った構想を現実のものにするサービスとして「KDDI Accelerate 5.0」を紹介した。IoT(Internet of Things)のセンサーなどを活用して、現実世界(フィジカル空間)のデータをクラウド(サイバー空間)に送り出す、5Gが本格的に普及すれば、この動きはさらに加速する。

KDDIが提唱する「Accelerate 5.0」。IoTのセンサーなどでリアルデータを収集し、蓄積したデータを分析して現実世界に活かす構想KDDIが提唱する「KDDI Accelerate 5.0」。IoTのセンサーなどでリアルデータを収集し、蓄積したデータを分析して現実世界に生かす構想。

 集まったデータを分析し、その結果をまた現実世界にフィードバックする。この繰り返しで、データドリブンな業務が可能になり、データでよい循環を回す社会を作っていくことができる。「KDDIは高品質のネットワークをベースに、多くのお客さま企業と新しいサービス、ソリューションを創り上げていきたい。そうすることで、データドリブンでサステイナブルな社会を作っていくことを目指している」と丸田氏は語った。

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