「総合物流の王者」が大きな変貌を遂げつつある。人口減少や脱炭素など物流を取り巻く社会環境が大きく変わりつつある中で、社会に受容される持続可能なサプライチェーンとは何なのか。日本通運は、DXを切り口に、個別最適を乗り越えたオープン型の「デジタルプラットフォーム」の構築に向けて戦略のかじを切った。
増田 貴 取締役/執行役員
経営企画部
財務企画部担当
日本通運(以下、日通)のデジタル戦略が加速している。2017年に本社に「ロジスティクスエンジニアリング戦略室」を設置して、倉庫での自動化・省力化機器の実装を加速するとともに、自動運転やトラック隊列走行の実証実験にも参画。自動化・省力化機器の導入では、昨年7月に東京都内にショールーム型の先端物流施設「NEX-ALFA」を開設したほか、全国各地の倉庫に自動搬送台車(AGV)や自動フォークリフト(AGF)の導入を進めている。
さらに、昨年4月には「デジタルプラットフォーム戦略室」を新設して、顧客の産業別にプラットフォーム(PF)を構築し、サプライチェーン(SC)全体を一体管理する取り組みに本腰を入れ始めた。
同社がデジタル化に力を入れ始めた背景には、物流業の将来への強い危機感がある。経営企画・財務企画を担当する増田貴取締役執行役員は、「30年代の半ばには、物流業界の姿は激変しているかもしれません。その時点で倉庫内作業はほぼ無人化され、自動走行もかなりのレベルで実現しているはずです。”物流”という仕事そのものは絶対になくなりませんが、ヒトが行っていた作業のほとんどを機械やロボットが代行している可能性があります。そのときに、当社のような物流企業は何を”事業の柱”にしていくのか。そこに強い危機感を持っています」と話す。
拡大画像表示
物流の作業の大半が機械・ロボットによって自動化されれば、物流企業が長年かけて積み上げてきたオペレーション面での強みが発揮しにくく、他社との”違い”を生み出すことが難しくなる。また、他分野からの参入も容易になる。「すでに足元では異業種が物流を新たな事業領域として参入する動きも出始めており、プレーヤーの顔ぶれが変わりつつあります」(増田取締役)と指摘する。