将来像からバックキャストし経営戦略に反映
そうした中、日通では昨年から今年にかけて、経営企画部内のDX(デジタルトランスフォーメーション)専任チームが外部の専門家などを交えて、物流業界で中長期に起こり得る変化を予測した。そこで導き出された”仮説”が前述のシナリオだ。「あくまで仮説であり、時間軸も含めて状況は刻々と変化します。しかし、重要なのは予測される将来の姿からバックキャストして、足元で何が起きているのか、お客さまの業界でどんな変化が進んでいるのかを定点観測しながら逐次修正し、将来に備えることです」(増田取締役)と、バックキャスト思考の重要性を強調する。
そのとき、日通は何を生業(なりわい)として物流業界で存在感を発揮するのか。その答えの一つが「ソリューション」だ。「例えば、今回のコロナ禍で企業のグローバルSCは大きく傷つきました。在庫の持ち方をとっても、経営効率の面では集約することが望ましいものの、分散化することでリスクヘッジしなければならない。こうしたお客さまが抱えている課題に対し、DXを踏まえ、SC全体を捉えた観点から解決策を提示することが、当社の取るべき方向性であり、他社との差別化要因になると考えています」(増田取締役)。
さらに、人口減少やカーボンニュートラルなどの社会環境の変化に伴い、今後は「物流の社会インフラ化」が加速度的に進むことが予測される。増田取締役は「ESGやSDGsがより重視される社会となり、将来的には、企業単独にとどまらない、各産業を超えた社会全体での効率的で環境にやさしいSC(スマートSC)が求められるようになるでしょう。今後は社会貢献につながらない物流は生き残れない時代がやってくるはずです」と指摘する。