デジタルプラットフォームで持続可能なサプライチェーンを構築する

医薬に続き半導体でPF戦略を展開

日本通運
戸田晴康 執行役員

デジタルプラットフォーム戦略室担当
兼 デジタルプラットフォーム戦略室長

 では、社会に受容される持続可能なSCとはどのようなものなのか。その実現のための第一歩となるのが、産業別に進めているPF戦略だ。デジタルPF戦略を担当する戸田晴康執行役員は「企業ごとに個別カスタマイズする手法は効率面でも限界を迎えつつあります。フルオーダーメイド型の物流は短期的には”痒いところに手が届く”ように思えるかもしれませんが、変化の激しい時代においては、どこかのタイミングで資産が負債に転じる可能性すらあります。それよりも、各産業に共通する課題をひも解きながら解決に導いていくPF型サービスの方が、リスクや変化の激しい時代においては有効であり、持続性も担保できます」と強調する。

 こうした戦略に基づき、日通では、すでに医薬品業界向けに受発注や商流をトータルで管理できるデジタルPFを構築し、近く本格稼働を予定している。医薬品業界ではGDP(医薬品の適正流通基準)への対応による品質保持が喫緊のテーマであり、中でもトレーサビリティーの確保による温度管理と偽薬混入の防止が業界に共通する課題となっている。そこで、製品にIoTセンサータグを装着して輸送過程での温度逸脱などを常時監視するとともに、医薬品メーカーや卸、医療機関、物流企業などSCを構成する全ての関係者がブロックチェーン技術を採用したクラウドを介し、セキュリティを確保した状態で情報共有できる仕組みを構築した。

「大事なことは、誰もが参加できるオープン型であること。すべての関係者が一つのPF上で動くことができれば、社会効率性が飛躍的に高まるとともに、コロナ禍のような事態が起きてもSC全体が”ワンチーム”となってレジリエンス(復元力)を高め、様々なリスクを乗り切ることができます。それを実現するための重要なツールがDXです」(戸田執行役員)と説明する。

 医薬品に続いてデジタルPFの展開を見据えているのが半導体分野。5G需要やコロナ禍によるリモート機器需要に支えられ、半導体需要は空前の活況を呈しているが、SCや輸送プロセスにおける共通課題の一つが「振動」への対応だ。半導体メーカーに納入される半導体製造装置は、1台数億円という高額製品が多い上に、振動に弱いことが輸送上の難点とされる。「これまではマニュアルでの対応が中心でしたが、IoTセンサータグを装着することで”どこで何が起きたか”がリアルタイムで可視化でき、今後の改善につなげられるほか、振動自体も許容範囲内かどうかがデータとして分かるようになります」(戸田執行役員)。

 また、半導体チップをセットメーカーなどに輸送する場合でも、振動の”見える化”によって、製品の歩留まり率を高めることが可能になる。「半導体産業でもデジタルPFを構築する価値は十分にあると思います。また、それ以外のどんな業界にも切実な共通課題は必ずあるはずです。例えば、アパレル業界では偽ブランドや生地の個体識別といった課題があるかもしれませんし、EVへの急速なシフトが進む自動車業界では、従来の系列を超えた新たなSC構築が大きなテーマになっています」(戸田執行役員)と、PF戦略の水平展開に意欲を見せる。

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