世界2万社で導入済みの
ビジネスフレームワーク

上條:スケールド・アジャイルという米国企業が開発したSAFe(セイフ:Scaled Agile Framework)というフレームワークを使います。これを利用すると、経営が意思決定した戦略を、複数のアジャイルチームからなる大規模プロジェクトで実現できます。

 そのプロセスを、SAFeでは「経営レベル」「ビジネスレベル」「ITレベル」の3つに分解します(図表3)。

 経営レベルでは、企業もしくは事業部全体で取り組むべき課題を決め、ビジネスレベルではその課題を解決するためのシステム上の機能を定義し、それらを複数のチームに割り当てます。ITレベルでは、各チームに割り当てられた機能をユーザーの要求に合うように分解し、まさにアジャイル開発をしていきます。

 このSAFeに私たちが出会ったのが冒頭でお話しした共同研究だったのです。「これだ」と思いました。SAFeは欧米を中心に世界の約2万社、米国ではフォーチュン100企業の7割で導入されています。

野中:そうした便利なフレームワークがあるならどしどし使うべきでしょう。ただ、アジャイルも、最近ではDXも、あくまで経営の手段であって、パーパス(目的)ではないはずです。

 日本企業は昔からそのパーパスを大切にしてきました。最近では、伊藤忠商事が「三方よし」に、清水建設が「論語と算盤」に、それぞれ企業理念を一新しました。すごくいいことですね。そして、知的機動力経営には、それを実現する実践知のリーダーシップが不可欠です。その第一の条件が、「共通善、目的(パーパス)の追求」です。

上條:おっしゃる通りです。SAFeを使って経営や事業のスピードを上げるだけでは駄目で、「何を目指すか」というパーパスが不可欠です。私はそのパーパスをつくる際にSECIモデルが活用できると思っているのです。

野中:どういうことでしょうか。

上條:首都圏に本社がある小売業のお客様がいて、規模の拡大に伴い、店舗で働く従業員の個々の知識や経験を、組織の知に変えようとして、ナレッジポータルサイトの構築を私たちに託されたのです。

 そのベースに置いたのがSECIモデルなのです。従業員がサイトに自身の経験による気づきを投稿すると、別の従業員がそれに気づいて新たな書き込みをしたり、自分の新たな知恵として活用したりします。この流れが繰り返されることで、組織のナレッジが豊かになるとともに、各自に浸透するという仕掛けです。

野中:まさに知識創造ですね。

上條:はい。SECIモデルを中核にすえたおかげで、このポータルサイトが仕事に役立つ知識を集めた単なるデータベースではなく、個々の従業員の働き方や仕事への向き合い方を変える可能性が出てきたのです。

 サイトの開発にあたっては、もちろんアジャイルを使い、お客様に動く機能を見せながらディスカッションを重ね、一体となってつくり上げました。

野中:とてもいいお話です。そうした事例が次々生まれてくるといいですね。

上條:TDCは、SAFe×SECIで日本企業のイノベーションやDXを支援していきたいと考えています。

問い合わせ先
TDCソフト株式会社 https://www.tdc.co.jp