2017年4月に開設された「Fukuoka Growth Next(FGN)」は、日本最大級の官民共働型のスタートアップ支援施設。福岡市天神の繁華街にある旧大名小学校を再生した施設では、独自のインキュベーションプログラムで若き起業家たちをサポートしている。現在入居企業は144社を数え、旧教室をリノベーションしたオフィスで、未来のユニコーン(※)を育てている。

 有望な起業家たちが福岡から続々と育っている。例えば、ベンナーズという水産業のスタートアップ企業。主力商品は、未利用魚を使った“お魚サブスク”「フィシュル」である。

ベンナーズが製造・販売する未利用魚を使った「フィシュル」。漁業者・消費者・社会が豊かになれるビジネスモデルだ

ベンナーズ
未利用魚活用の
もったいないビジネス

ベンナーズ
井口剛志 代表取締役社長
fishlle.com/

「未利用魚とは、規格外やマイナーな魚、あるいは傷ついたり漁獲量が多かったりで、味とはまったく関係のない理由で、流通の前段階で破棄されてしまう魚。これを積極的に買い付けして、西京漬け・カルパッチョなどのミールキットにして、オンラインで販売しています」。そう説明するのは、創業者である井口剛志社長だ。

 父親と祖父母が水産業に従事していたことから、もともと水産業にはなじみがあった。米国・ボストン大学でアントレプレナーシップを専攻し、情報の不均衡を解決するプラットフォーム戦略に関心を抱いた。卒業と同時に地元の福岡市で起業、漁業者とバイヤーをマッチングさせるプラットフォーム事業を始めたが、漁港を回るうちに未利用魚の存在を知り、「もったいない」をビジネスに結び付けるアイデアを思いついた。

※ユニコーン企業:評価額が10億ドルを超える未上場のスタートアップ企業。