【特別対談】ポストDX時代に日本企業が取り組むべき課題とは

デジタルだけ導入しても何も変わらない まずマネジメント層が変化を体現すべきだ

人のスキルをアップデートするには
変わりにくい人をサポートする仕組みを

──日本企業には、終身雇用を前提とした組織や人材の固定化・硬直化など、ポストDX時代に向けて変えていかなくてはならない「人」の課題があります。

今井 その課題を解決するには、従業員のアップスキリングやリスキリングが不可欠です。しかし日本は、中高年のITリテラシーが不足しているうえ、年齢が上がれば体力的にも衰えが顕著になります。また現在の職場・職種で高いパフォーマンスを発揮している人でも、壮年になってから新しい仕事を覚えて同様の働きぶりを発揮するのは難しい。したがって、本人は異動したくない。上司も経験豊富なベテランを手放したくない。これが経営資源の再配置が起きにくい原因であり、組織を硬直化させている要因です。

 無理に人を変えるのではなく、変わりにくい人を柔軟にサポートする仕組みづくりが重要です。たとえば、異動によってパフォーマンスが落ちないように、デジタルで補完するなどの仕組みをつくるわけです。そうすれば、変わろうとする本人のモチベーションや挑戦する意欲は保たれるのではないでしょうか。

 このような仕組みが用意されていないと、人はなかなか変化に適応できません。逆にこれがうまくいけば、組織として目指している経営資源の再配置が可能になります。

足立 なかには、まったく変わらなくていい職種もあると思います。そこでまず、変わらなくていい人と、変わらなくてはいけない人を明確にし、変わるべき人については、どう変わらなくてはいけないか、すなわち「あなたは、これができるようになるべきだ」ということを示さなくてはいけません。

 単に「変わらないとだめ」では何をどうするのかわからないし、変わらなくていい人まで「自分はこのままではまずいのか」と不安になったりします。変わるべき人「だけ」に、具体的にどう変わる必要があり、その結果どのようにアップスキリング、リスキリングできるのかを説明することが大切だと考えています。

──日本でも以前に比べれば、人材の流動性が高まってきました。

今井 日本でも今後はジョブ型やミッション型の働き方が増え、人材の流動性がさらに高まるでしょう。外部の人たちとのコラボレーションも進むと考えられます。

 実は、当社もいま、ハイエンドなフリーランサーと連携しようとしています。当社はまだ設立から間もなく、人的リソースが限られています。専門性の高い社内人材を特定のプロジェクトに充てると、他に新しい仕事の依頼が来ても受けられません。

 そこで、高い専門性や豊富な知見を持つ外部の人たちを組織化し、フリーランスとしての立場でプロジェクトに参画してもらえれば、当社としてもケイパビリティを最適化できますし、顧客満足度向上につながると考えています。

 リモートワークでプロジェクトを進める環境も整ってきましたし、副業を認める会社も増えていますから、働き方のオプションとしても可能性があると考えています。

足立 副業には、さまざまな利点があります。なかでも大きな特徴は、多種多様な人たちと出会うことで、まったく違った価値観に触れることができる点でしょう。これは、「人生100年時代」といわれるこれからの社会にもヒントになります。年を取ったら働けない、ということではなく、多様な価値観に刺激を受けながら自分自身をアップスキリング、リスキリングしていけば、人生に新たな可能性を見出し続けることができます。私は「メイン」の仕事に対する「サブ」の仕事という意味の「副業」ではなく、いくつかの異なる仕事を併せ持つことを意味する「複業」と言うようにしています。

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