Principal
渡瀬博文 氏(左)
富士通入社後、社長室など複数の戦略部隊にて戦略立案・事業再生・M&Aなどを推進。2013年よりジー・サーチの代表取締役社長としてデータ販売・デジタルマーケティングの事業経営を担い、富士通帰任後はデータ利活用推進室長、AI サービス事業本部長、Data×AI事業本部長を経て現職。
Ridgelinez
Principal
野村昌弘 氏(右)
流通業、製造業におけるSCM改革、業務改革、IT戦略コンサルティングを多数手がけ、その後、富士通の経営戦略室にて経営戦略策定業務に従事。近年はAI を活用した企業変革、業務変革(業務AI モデリング)コンサルティングを主導。
企業がDXを推進する時、データの扱いに精通したプロフェッショナルの存在は不可欠であり、各社ともデータサイエンティストの獲得にしのぎを削っている。一方で、データサイエンティストが果たす役割を明確に定義しないまま、人材探しだけを急いでいる例もある。データ活用とDX推進に数々の実績を持つエキスパートが、企業のトランスフォーメーションに必要なデータ人材について語った。
データサイエンティストが
活躍できないのはなぜか
データ活用はDXの核心的テーマと言っていい。だからこそ、日本でも多くの企業が取り組んでいるが、思うような結果につながっていない。その背景には、データ活用に関する根本的な理解の不足や、実践のプロセスが確立されていないこと、さらに部門間障壁などの課題があると、Ridgelinezの渡瀬博文氏は指摘する。
「データサイエンティストに大きな期待を寄せる企業は多いのですが、実際のところ、その手前のデジタルツールの導入で四苦八苦している状況が見受けられます。これが、データサイエンティストを活躍させようにも、その規範となるパターン化や構造化ができない原因の一つになっています」(渡瀬氏)
多くの企業がデータサイエンティストの獲得に走っているものの、そもそもデータ活用によって何を達成するのかという根幹の部分が置き去りになったまま、人材不足感だけが先行している懸念はぬぐえない。この結果、人材を獲得してもマネジメントの側が使いこなせず、「採用してみたが、効果が見えない」と嘆くことになってしまう。
野村昌弘氏は、事業や業務を推進するビジネスサイドとデータサイエンティストの間にある認識のギャップも大きいと語る。
「データサイエンティストは情報工学領域の専門家ですから、純粋な分析や分類の問題は解くことができます。しかし、企業における現実的な問題は、その企業の事業・業務に関する知識がなければ理解できません。反対に、ビジネスサイドは、どういう問題の立て方をすればデータサイエンティストが解を出せるのかがわからない。コミュニケーションギャップに起因するキャズム(断絶)が生じているのです」(野村氏)