データ活用の成否は
トップの意識で決まる
さて、日本企業が今後、データドリブン経営を実践していくためには、何が求められるのだろうか。渡瀬氏はこう提言する。
「経営判断には、過去のデータを解析するだけでは見えない部分がたくさんあります。成功の確率を高めるためには、より精度の高い多角的なデータ解析が必要ですが、現場から上がってきたデータやその分析結果だけを見ていても、目指すべき将来像は浮かび上がってきません。先に経営者として実現したい姿を明確に描き、そこにデータ解析を連動させないと意味がないのです。経営トップはデータが示す結果を常に自社のビジョン、ミッション、目的や戦略と結び付け、みずから判断を下す意識を強く持つべきです」(渡瀬氏)
そして、渡瀬氏自身が5年間CEOを務めた経験も踏まえて、こう続ける。「CEOが決断する内容は不確実性が高いものが多い。それゆえに、戦略を実行したからこそ明確になる課題があります。これからの経営には、より成功確率が高い戦略を意思決定するためのデータの収集・解析に加え、戦略実行後のマネジメントが重要になります。戦略実行時にKPIを定め、データを収集・解析することにより、状況に応じて施策のシナリオを変える、もしくは施策そのものを入れ替える意思決定をする。そういった、動的な経営が求められます」(渡瀬氏)
経営者は、目的の実現に向けてデータが示唆するものを敏感に感じ取り、次々に打ち手を考えなくてはならない。企業のトップとCxOクラスのメンバーは、そこを意識すべきだと渡瀬氏は強調する。
日本が直面する社会的な重要課題として、深刻化する労働力不足がある。これに対して野村氏は、減少の一途をたどる労働力を補うために、AIを含めたデジタルによる業務自動化の流れが急加速していくだろうと見ている。
「業務の自動化が進むと、人・モノ・カネの動きなどがすべてデジタルデータとして蓄積され、それをいかに利活用するかが、競合他社との重要な差別化要因になってきます。その時カギとなるのは、これまでのようにただデータをため込むのではなく、常に自社の優位性や競争力に関連付けて、必要なデータを収集・蓄積し、活用していくことです」(野村氏)
戦略的データ利活用の巧拙が、企業の競争優位性を大きく左右する時代がすぐそこまで来ている。Ridgelinezが定義する3つのタイプのビジネス変革人材である、ビジネスアナリスト、データアナリスト、データサイエンティストの重要性はいちだんと高まるはずだ。
「経営者は変革の段階に応じてこうしたビジネス変革人材に適切なミッションを与え、戦略的な意思決定をサポートさせるとともに、彼らの能力を活かすための組織変革にも注力すべきだと思います」(野村氏)
経営者とビジネス変革人材が目指すべき姿を共有し、データに基づく戦略立案・実行・修正をアジャイルに進めていくことができれば、必ず新しい未来が開けてくるだろう。
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