「フジトラ」を日本型DXの成功モデルに。富士通が変われるなら日本企業は変われる

「フジトラ」を日本型DXの成功モデルに。富士通が変われるなら日本企業は変われる富士通
執行役員常務
CIO(最高情報責任者)
CDXO(最高デジタル変革責任者)補佐
福田 譲 氏
1997年にSAPジャパンに新卒入社、2007年からバイスプレジデント、2014年には代表取締役社長に就任。2020年3月に同社を退任し、現職。フジトラのプロジェクトリーダーとして、富士通グループの変革に取り組む。

世界に後れを取る日本企業のDX。その印象を富士通が覆そうとしている。2020年7月から着手した全社DXプロジェクト「Fujitsu Transformation」(略称フジトラ)がそれだ。デジタル時代の競争力強化を目指し、製品やサービスばかりか、ビジネスモデル、業務プロセスや組織、企業文化に至るまで、部門・グループ・リージョン横断で富士通グループ全体の変革に挑む。このプロジェクトを率いる福田譲氏に、変革への想いとその道のりを聞いた。

富士通自身を変革する全社DXで
日本企業のDXリファレンスモデルに

──事業の創出・変革からプロセスの標準化・効率化、人事制度や働く環境まで、経営・現場のすべてに及ぶフジトラを、デザイン思考やアジャイルなどのフレームワークを活用して進めていると伺いました。社員一人ひとりにどのようなマインドセットを促していますか。

 フジトラの中心には常にパーパス(存在意義)があり、そこが出発点であるべきだと考えています。そこで、時田(代表取締役社長 兼 CDXO 時田隆仁氏)を含めたプロジェクトの全参加者に、自身のパーパスを彫り出して言葉にする「パーパス・カービング」を行ってもらい、全社に公開しました。

 理由は明確です。元来、人は変わりたくない生き物だからです。よほどの覚悟がないと、それまでのやり方を変えようとは思わない。フジトラという「変革のためのプロジェクト」に参加するからには、自分は何のために富士通で働いているのか。何にやりがいを感じ、何をやり遂げたいのか、それをどう実現するのか。自分と向き合うところからスタートしたのです。

──福田さんご自身のパーパスは何でしょうか。

 私のパーパスは、「日本を、世界を、もっと元気に!」です。私は前職で、ERPなどのITソリューションを活用した企業向け経営改革の支援をしてきました。日本企業の典型的な課題の一つは、「自分たち自身をなかなか変えられない」部分にあるのではないでしょうか。このままでは、変革が必須の時代に生き残れない。日本企業を、外からではなく中から解決するお手伝いがしたい。その活動を通して、まずは富士通、そして富士通の事業を通じて日本の企業や社会、そして世界を元気にしたいというのが私のパーパスです。

──高度成長期には日本企業の強みとされてきた同一性の高さが、いまは足かせとなっています。

 一人ひとりのポテンシャルは高いのに、お互いを過度に気遣うあまり、1+1が2ではなく1.7くらいになってしまう。個人が組織になり会社になると、世界の競争の中で力が減退していってしまう。これを、マネジメントやリーダーシップ、カルチャーの変革を通して、むしろ掛け算にして、個が集まることで力が倍加するようにしたい。日本企業の中でもとりわけ日本企業らしい富士通が実現できれば、他の日本企業も「富士通にできるなら」と、変革の勇気が湧くのではないかと信じています。

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