「フジトラ」を日本型DXの成功モデルに。富士通が変われるなら日本企業は変われる

社会の「持続可能性」も視野に
自社のあるべき未来ビジョンを描く

──富士通の社内改革のリーダーとして、フジトラを含めた5年後、そして10年後のビジョンは。

 富士通はパーパスとして「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」と宣言しています。ここには「イノベーション」や「信頼」など、いずれも重要なキーワードが盛り込まれていますが、この先10年のレンジで見た時、一番ポイントになるのが「持続可能性」だと思っています。

 世界の人々は、これまでは一生懸命に仕事をしてお金を蓄えれば、生涯安心して暮らせると考えてきました。しかし残念ながら社会の構造が変わり、その観念が通用しなくなっています。いま極地などの氷がすごい勢いで融けていて、このまま温暖化に手を打たないでいると、将来、東京を含め世界の多くの都市が水没してしまう。2050年頃になると、いまとは比べ物にならないほど大型の台風が襲来するともいわれています。そうなれば、いくら資産があったところで役に立ちません。「持続可能性」は、私たちの社会や生命に直結する課題になっているのです。社会や個々人にとって重要なテーマは、必ずビジネスになります。SDGsが目指す「持続可能性」はもはや綺麗事ではなく、ビジネスそのものといえます。

「全員参加で」と「データを武器に」
人と技術の両輪でフジトラを加速する

──フジトラ推進において、重要なポイントは。

 フジトラでは「DXプロジェクト・ステートメント」と呼ばれる9つの価値観・行動規範を掲げています[図表1]。なかでも重要なのが「全員参加で」と「データを武器に」の2つです。

「全員参加で」というのは、社員一人ひとりの想い・考えを経営に反映させるということであり、同時に社員一人ひとりが富士通の未来を体現するということです。そのために現在、「VOICEプログラム」という仕組みを導入しています。これは顧客や従業員の声をデジタルプラットフォームで集めてAIで分析、経営施策に反映するものです。テレワークをはじめとした多様で柔軟なニューノーマル時代の働き方「Work Life Shift」の取り組みに活用するなど、新たな経営のあり方として注目し、注力しています。

 またフジトラがスタートした2020年には、時田が「これから富士通は既存の財務指標の他に、非財務指標を加えて経営する」と対外的に宣言しました。このうちの一つが「エンプロイーエンゲージメント」、すなわち社員がどれくらい会社にエンゲージしているかを、重要な評価指標の一つに加えたのです。まさに、「全員参加」が富士通の企業価値であると宣言したわけです。

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