ビジネスモデルを創造的に自己破壊し、新たな金融インフラの構築に挑む

ビジネスモデルを創造的に自己破壊し、新たな金融インフラの構築に挑むジェーシービー
イノベーション統括部 企画グループ 次長
間下公照 氏

ブロックチェーンを使った暗号資産(仮想通貨)や、スマートフォンを使ったキャッシュレス決済が次々に登場するなど、金融・決済サービスの分野で激動が続いている。一見、ディスラプター(破壊的イノベーター)が既存のエスタブリッシュメント(大企業)を脅かしているようにも映るが、日本発唯一の国際カードブランドであるジェーシービー(JCB)はいま、金融・決済サービスの10年先を見据え、ビジネスモデルの創造的自己破壊と再創造に挑もうとしている。

新興ペイメントプレーヤーが
決済インフラを揺さぶる

 JCBの新規事業立ち上げを数多く手がけた経験を持ち、現在は同社イノベーション統括部次長の職にある間下公照氏は、金融インフラの変革が急速に進んでいると語る。

「エンドユーザーが買い物をして支払いをするインターフェースには、クレジットカードやeコマースサイト、スマートフォンを使ったQRコードなどさまざまなものがあり、多様化はますます進んでいます。しかし、その先の口座振込や引き落としなど決済のインフラは、すべて銀行が提供してきました。ところが近年、中国のAlipayやアメリカのPayPalなど新たなペイメントプレーヤーが登場し、銀行の決済インフラを介さない決済が普及してきました」

 こうした新興ペイメントプレーヤーは、銀行口座に依存しない自前のバリューアカウントを持ち、そのバリューアカウント間で資金をリアルタイムで移転するインスタント型の決済を実現している。

 こうした動きに追随しようとする日本のFinTech(フィンテック)プレーヤーも出てきている。さらに今後、銀行API(アプリケーションプログラミングインターフェース)の開放や金融通信メッセージの国際標準規格であるISO20022の普及が進んでいけば、インスタントペイメント(即時決済)の時代が一気に近づくと間下氏は見ている。

「こうした話は3~5年先の予想ですが、JCBが見据えているのはもう少し先、具体的には、10年先がどうなるかを想定して新たなビジネスモデルを構想しています。10年後となると、インターフェースの部分に人が介在しない取引、たとえばM2M(マシン・トゥ・マシン)での決済も視野に入ります」
決済のリアルタイム化や自動化、低コスト化は世界的な流れであり、日本も同じ方向に進むものと考えられる。

「10年先を想定しているものの、デジタル化によって変化のスピードが速まっていますから、実際にはもっと早く構想している未来がやってくる可能性もあります。ですから、変化の小さな予兆も見落とさず、ビジネスモデル変革の準備を急ぐ必要があります」

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