医療用医薬品卸のリーダーが挑む、業界横断のサプライチェーン変革

アルフレッサ
代表取締役社長
福神雄介 氏

医療用医薬品卸大手のアルフレッサが、DXによる業界の変革を先導している。抗がん剤、希少疾患向け医薬品などのスペシャリティ医薬品の新たな流通管理プラットフォームを構築し、商用化を開始した。Ridgelinezは、富士通Japanとともに、同プラットフォームの開発に最初期から関わってきた。アルフレッサ 代表取締役社長の福神雄介氏は「医薬品物流のみならず、医薬品メーカー、医療機関のビジネスモデルを大きく変革するものになる」と力を込める。

流通管理プラットフォームで
業界のDXを推進

 アルフレッサが、医療機器・ライフサイエンス・ヘルスケアITのPHCおよび富士通Japan、Ridgelinezとともに開発を進めてきた、個別化医療支援のための特殊医薬品(スペシャリティ医薬品)の新しい流通管理プラットフォーム「NOVUMN」(ノヴァム)が、商用化を開始した。2020年2月から複数の医療機関の協力の下、実証実験やパイロット運用を行ってきたが、満を持してのリリースとなる。

 NOVUMNは、Next Ordinary Value for Universal Medicine Networkの略で、「『医薬品の流通に新たな情報価値を載せて次世代の普遍的価値を提供する医薬品ネットワークを目指す』という思いを込めています」とアルフレッサ代表取締役社長の福神雄介氏は紹介する。

 NOVUMNの大きな特徴は、医薬品一つひとつのトレーサビリティ(追跡可能性)を確立したうえで、適切な在庫量維持を可能にすることだ。RFID(Radio Frequency Identification:無線自動識別)タグや、クラウド上のインフラ基盤、IoTなどの技術を活用する。

 医薬品にRFIDタグを貼り付けることで、医薬品名、用量、使用期限などのさまざまな情報をひも付けることができる。これらの情報を医療機関内のアンテナが取り付けられた薬用保冷庫やスマートケージで読み取り、クラウド上のシステムに流通過程のデータとして記録する。

「NOVUMNでは、いわゆるレジメンと呼ばれる治療計画や医薬品投与スケジュールなどの情報を連動させます。このため医療機関にとっては、必要な医薬品を発注し忘れるといったことが防げるだけでなく、最小限の在庫だけを保有すれば済むので、保冷庫など保管施設のスペース負担を軽減できます。また私たち卸にとっては、医療機関での使用情報を共有することであらかじめ必要な医薬品を確保し、確実にお届けすることが可能になります」(福神氏)

 つまり、NOVUMNは医療機関にとっても医薬品卸にとってもメリットが大きいプラットフォームなのである。もちろん製薬メーカーにとっても、自社製品の動きが可視化され、マーケティングなどにデータを活用できる。

 特筆すべきは、同プラットフォームをアルフレッサが独占するのではなく、他の医薬品卸にも広く参加を呼び掛けている点にある。同社が中心となって協議会を立ち上げ、まさに業界全体のプラットフォーム化を目指している。

「当社だけで、全国すべての医療機関をサポートすることは不可能です。また、医療機関は一般的に、複数の医薬品卸と取引をしています。ですからプラットフォームが複数あり、医薬品によってプラットフォームが異なるというのは不便です。むろん、使い勝手が悪ければ、多くの医療機関や卸に使ってもらえません。多くの方たちに支持されるものにするために、現在もブラッシュアップを重ねているところです」[次頁図表]

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