オンライン事業成長の旗手、
クリエイターと読者を結ぶ「コト」事業

「クリエイターのファミリーになる」をビジョンとして掲げる同社は、クリエイターとより良い関係を築き、彼らの困りごとを解決し、その想いを実現するため、同人誌の流通・販売の他にも、さまざまな事業を展開している。その代表がオンラインサブスクリプションモデル「Fantia」(ファンティア)だ。

オタクの聖地「とらのあな」で進む“事業変革”の正体クリエイターの創作活動を直接支援する「ファンティア」
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 イラストレーター、マンガ家、コスプレイヤー、ゲーム製作者などのクリエイターが創作活動をFantiaなどで発表し、ファンは交流しながらその活動を金銭的に支援するプラットフォームである。一般的なクラウドファンディングが、事業運営や製品に対する一度きりの応援購入、予約購入という性質であるのに対し、Fantiaモデルは「クリエイターの日々のクリエイティブ活動とコミュニケーション」に焦点を合わせており、クリエイターと支援者の関係が継続していくという違いがある。

「専業で食べているクリエイターさまの中には、商業誌の仕事が不定期であり、安定収入の確保に課題を抱えている方もいる。その金銭的な課題を解決するというのは当社の命題の一つです。今まで日陰に埋もれていた日々のクリエイティブ活動自体に価値を見いだしたことが重要で、不安定なクリエイターの収入を安定させる、日本に今まで存在しなかった解決法です」(吉田代表取締役)。ユーザー数は480万人を突破(21年5月現在)し、今期の流通総額70億円規模(前期は約30億円)、年間9億PVに達する見込みだという。

「アニメやマンガなどの熱狂的ファンは、単に作品を消費することだけでなく、作品のバックグラウンドや制作過程にも興味を示し、作品を通じた関係構築に価値を感じていて、その表現の場が同人イベントでした。しかしコロナ禍の今は、イベントへ行って、この人の作品が好きというクリエイターを発見して同人誌を購入することが難しくなっています。その状況や欲求に合致するツールとしてFantiaが機能しており、価値を感じていただいている部分だと考えています」(鮎澤取締役)

 さらに20年12月には、同じビジネスモデルで、個人、法人を問わず、イラスト、マンガ、アニメ、音楽、小説などのさまざまなエンターテインメントを創造し届けるプロのクリエイターとファンを結び付ける月額会員制のファンクラブプラットフォーム「クリエイティア」をスタートさせている。

オタクの聖地「とらのあな」で進む“事業変革”の正体成婚者の累計が500人を超えた「とら婚」
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「サービスに対する評価だけでなく、EC事業と同じく、この事業の拡大にはエンジニアやアナリストなどの活躍が不可欠です。そのため当社はDX戦略の一環として、既存組織とは全く異なるスキルセットやカルチャーを持つ子会社『虎の穴ラボ』を設立し、エンジニア組織としての開発力や数値管理・分析体制を強化しました。Fantia事業は生産からアウトプットに至る全ての工程がオンラインで完結するので、KPIを明確化し、過不足なく即時収集・分析できるデータ環境とそれを支える組織の構築が、事業成長に直結しています」(鮎澤取締役)

 同社は他にもオタク層向け結婚相談サービス「とら婚」や、マンガや同人に強い興味を示す海外顧客向けの物流サービス「AOCS」などのユニークな事業を展開し、いずれの事業も成長している。