プレクーリングで直接体温・
深部体温を下げる
これまで炎天下での活動では、水分補給の目的でイオン飲料が飲まれてきたが、アイススラリーを飲めば、水分補給は不要なのだろうか。只野氏は「それぞれで役割が異なる」と話す。
「イオン飲料は、汗の元となる水分と電解質を補給して体温を維持することが目的です。アイススラリーは、直接体温(深部体温)を下げることが目的。汗をかきにくい高齢者、汗をかく機能が未熟な子どもなど“熱中症弱者”と呼ばれる人たちは、水分補給だけでは熱中症対策が難しいので、アイススラリーを併用することが有効です。もちろん、暑い場所で働く人たちにも適しています」
実際に、アイススラリーの導入は熱中症対策を必要とする企業の間で進んでいる。
ヤマト運輸は、熱中症のリスクが高い業務として「荷物の集配を行う業務にくわえ、事業所内や倉庫内での荷物の仕分け業務」(安全部安全戦略課の倉橋征示課長。以下、ヤマト運輸の全てのコメントは倉橋氏)を挙げる。
倉橋征示 課長
「これまでは、対策マニュアルを作成し、日ごろの生活も含めた熱中症対策の周知を行うとともに、塩飴の配付、気化式冷風機や工場扇を導入し、冷風を構内に循環させるといった策を講じてきました」。しかし、感染症対策によって社員の熱中症リスクが一層高まったため、大塚製薬の提案を受け、「2020年7月から全国のヤマト運輸の事業所でアイススラリーを導入した」という。
「特に熱中症のリスクが高い状況下(熱中症指数が厳重警戒・危険の時)で、飲用するよう周知しています。深部体温の上昇抑制という新たなアプローチで、確実な対策につながります。短時間でクールダウンを実感できたといった声も集まっています」
ヤマト運輸ではプレクーリングという概念とともに、アイススラリーの積極的な活用を一歩進んだ熱中症対策と位置づけており、21年度も導入予定だ。