ただそれは試行錯誤の道のりだった。「19年ごろに考えていたのは、薬剤師が患者の自宅へ直接薬を届けて服薬指導を行う方法です」。しかし、コロナ禍によって規制緩和が進み、調剤機能と宅配機能が分離されて宅配で受け取ることができるようになったことから、中村社長は担当地域に強い配送業者と組んで、当日配送サービスの仕組みを作り上げた(図3参照)。
「SOKUYAKU」の使い方を見ていこう。医師・薬剤師にはパソコン、タブレット、スマートフォンに対応した専用の管理画面が用意されている。予約のない患者が待つ「今すぐ診療待合室」という機能を利用すれば、隙間時間を使って効率よくオンライン診療ができるため、診察する患者数を増やすことができてクリニック経営にも好影響を及ぼす。また、在宅医療を受け付けている医師の場合、オンライン診療をうまく活用することで移動時間を節約できるはずだ。
患者はスマートフォンに登録費・年会費無料の「SOKUYAKU」アプリをインストールして必要事項を登録すると、すぐに利用できるようになる。診療は事前予約が基本だが、急に具合が悪くなったときや急いでいるときは、ホーム画面の「今すぐオンライン診療を受診」というボタンをタップするだけで、すぐに対応可能な医師をアプリがマッチングしてくれるところは便利だ。また、グルメサイトがレストランの味やサービスを評価する機能を持つように、「SOKUYAKU」も「患者さまが病院・クリニック、調剤薬局を評価する機能を搭載しています。待っていれば患者さまが来てくれるという時代ではありません。患者さまにきちんと接しているところは評価が高く、さらに患者さまが集まるという好循環になります。逆に評価の低いところは、指摘された改善点を直せばいい。双方に役立つ仕組みだと思います」(中村社長)。
ここまでは医師と患者の視点で見てきたが、「SOKUYAKU」には、もう一つ重要な使命がある。
全国に(コンビニよりも多い)約6万店あるとされる調剤薬局の救済だ。
中村社長は「かつては出店さえすれば売り上げが計算できた調剤薬局業界は成熟期を迎えており、変革が必要な時期にある」と警告する。
「患者さまの高齢化、医療機関受診者の減少、社会保障費の負担の限界という日本の医療が抱える問題のしわ寄せが調剤薬局にも来ており、生き残るためには在り方を根本から変えなければなりません。そこでやるべきことは調剤のデジタル化です」
例えば、調剤薬局チェーンが「SOKUYAKU」を導入して薬局内にコールセンターを造り、そこに薬剤師を常駐させ、患者にオンラインで服薬指導をした後、処方薬を宅配する仕組みにすれば、調剤薬局チェーンは複数の店舗を集約して効率を高めることができる。