初年次教育が充実
学びの質も変化
学部などの名称が伝統的であっても、カリキュラムが様変わりしているケースも少なくない。多くの大学が力を入れているのが初年次教育だ。入学直後に、将来のキャリアへの考え方と関連付けて、大学で学ぶ意義を再確認する。
その上で、意欲を持って、自律的、主体的に学習するためのスキルを身に付けるといったプロセスが一般的だ。例えば、入学直後からゼミナール形式の授業を実施して、自ら調べ学んだ内容をまとめて発表し、討論するといった大学らしい学びを実践する。あるいは、高校までの既習内容を再確認したり、リポートの作成やプレゼンテーションに必要なITスキルを身に付けたりといった内容も多い。
「ここまで大学がやるのかという声もありますが、大学生活を全うし、社会へ出るために、必要な力を獲得させるために大学が尽力する意義は大きいと思います」と、安田常務も評価するところだ。
大学の学びの質が変化したことも見逃せない。単位の取得には、授業への出席はもとより、随時提出するリポートなどが評価される。期末の試験を受けるだけというのではなく、しっかりと勉強しなければ卒業がおぼつかないのが現状だという。
「この背景には、大学自身が社会で通用する人材の輩出に強い責任を感じていることがあるのではないでしょうか。一方で、就職状況が受験生の大学選びに直結していることもあり、カリキュラムを確実に習得できる仕組みを取っているわけです」と、安田常務は分析する。調査でも、「キャリア教育など就職支援」「資格取得支援」といった就職に直結している取り組みが、受験生に注目されていることがわかる(表3)。
学びの質の変化を象徴するのが、少人数教育の充実である。ゼミナール形式の授業を教養教育で取り入れたり、ネーティブ教員による実践的な語学教育を習熟度別のクラス編成で行うといった取り組みが多く見られる。
「以前では考えられないほど、学生と教員の距離が近くなっています。インターンシップや学外との共同プロジェクトをカリキュラム化するなど、社会と密接に関わる機会も多く設けられています」。社会人出身の教員採用も増えており、現代の課題を意識したカリキュラムや授業への志向がますます強まっているといえそうだ。