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「アドテック東京 2012」からのメッセージを検証

河尻亨一 [元「広告批評」編集長/銀河ライター主宰/東北芸工大客員教授]
2012年11月14日
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 つまり、「ストーリー」への参加(体験)につながるトリガーやその後の導線作りが、インタラクティブなクリエイティブの鍵であるということだろう。それは先に述べた「共創」をデザインする際にもヒントとなりうる考え方だ。大きな意味での“ゲーム(参加性のある物語)作り”がクリエイティブの役割となるという考え方は説得力がある。

 同セッションでは水口哲也氏(水口クリエイティブオフィス代表)も、AKB48の総選挙や初音ミクを例に挙げつつ、ゲームデザイン的観点からコメント。「(そういった物語文脈に誘うことで)エンゲージメントは成立するのでは? 選択肢を狭めることで気持ちよく参加してもらうのはゲームの作法」と述べた。

 だが、一つ気がかりなことがある。「ゲーム(参加性のある物語)」はコミュニティ(ファンの集い)の形成に寄与する。そこでのエンゲージメントは強固であり「365日」のコミュニケーションが可能となるが、そのぶん狭く閉じやすいともいえる。つまり「360度」の展開を得意とする従来型のインダストリーは、そこにある“溝”を直視せざるをえないということだ。

 ここにコミュニケーションデザイン(360度)とコミュニティデザイン(365日)のギャップが生じる。若年層にも大きな物語をほしがる」気持ちが強くなって来ているという話を、昨今色んなところで彼ら自身から耳にすることが増えて来たが、その溝を埋める装置としての「物語」とは何だろう? そこへのアプローチを考えるセッションもあった。

Photo:gingaliter

 セッション「マス・ソーシャルから生まれる最適キャンペーンとは」(写真)で興味深かったのは、鹿毛康司氏(エステー/執行役 宣伝部長・クリエイティブディレクター)のコメントだ。

 鹿毛氏は昨年話題になった「ミゲル君」のコマーシャルなどを例に挙げながら、「CMの作り方も変わって来た。90%くらいのCMを目指しており、謎の部分を残しておくことで、視聴者が何か言いたくなったり、調べたくなるのがポイントでは?」と発言し、自ら手書きしたキャンペーンの“タイムライン(シナリオ)”を披露。それはマスメディアとソーシャルメディアを行き来しながら、ムーブメント化する物語のラフスケッチだった。

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河尻亨一
[元「広告批評」編集長/銀河ライター主宰/東北芸工大客員教授]

1974年、大阪市生まれ。99年、早稲田大学政治経済学部卒業。お茶の水美術学院講師を経て、2000年より雑誌「広告批評」(マドラ出版)に在籍。08年、編集長就任。10年、同社退職後、雑誌・書籍・ウェブサイトの編集、企業の戦略立案およびPRコンテンツやイベントの企画・制作を手掛けるほか、講演活動なども行っている。

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