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企業は本質的な解決策を見出せるか。
マーケティングはドラスティックに
再定義されている

「アドテック東京 2012」からのメッセージを検証

河尻亨一 [元「広告批評」編集長/銀河ライター主宰/東北芸工大客員教授]
2012年11月14日
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 セッション「オウンドメディアのその先へ」では、「オープン・イノベーション」(ユーザーの声を取入れた製品開発)の可能性についても言及されていた。新しい需要喚起の呼び水となりうる「共創」は現実味のあるキーワードになりつつあるが、施策が本格化するにつれ、「どこまでオープンにすればよいのか?(ユーザーとどのようにつき合えばいいのか?)」といった悩みのリアリティも増す。

 これに対して、今田素子氏(メディアジーン/代表取締役・インフォバーン/最高執行責任者)は「自社発ストーリーによる共創促進」「ユーザーを導くモデレーションの必要性」などをポイントとして挙げていたが、私はこれを「コンセプトとプロセスの設計をふまえたキュレーションの技術」として解釈した。

3.ストーリーの発生装置
としてのクリエイティブ

 スマホは一つの「ツール」であり、O2Oはそういったツールを用いて行う一つの「メソッド」である。そこに「エモーション」を吹き込むのが“クリエイティブ”の機能だ。しかし、インタラクティブな情報環境におけるクリエイティブは、従来とまったく同じ発想から生まれてくるものではない。そこには“別の文法”が存在する。

 テレビという「ツール」にコマーシャルという「メソッド」、そこで人に届くクリエイティブは? と考えたとき、私たちはそれぞれのアンサー(イメージ)を持ちやすい。「笑えるCM」「カッコいいCM」「泣けるCM」「驚きのあるCM」など、マスメディア環境下でのクリエイションに関しては、半世紀を超えるラーニングをへたノウハウが蓄積されているからだ。

 しかし、ウェブは普及して約15年。成功事例もあるとはいえ必勝法が存在するわけではない。今年のカンヌ国際クリエイティブ祭においては、その解釈は各人さまざまでありつつ、「ストーリーテリング」というキーワードからアプローチを模索する傾向は見られた。「クリエイティブ×エンゲージメント」と題したセッションでも、ゲーム性のある「物語」がメインテーマになっていた。

 このセッションに登壇した加藤隆生氏(SCRAP)は、同社の主催する「リアル脱出ゲーム」に言及しつつ、「僕らの役割はプレーヤーの中で物語が進行する装置を提供すること。それにより豊かさが参加者の中で生み出されるのであれば、アウトラインとなる物語自体はチープでもいい。人間の本能や欲求は大きく変化しないが、その吐き出し口が時代に応じて変わるため、新しい本能のアウトプットを作る必要がある。(クリエイターの仕事は)それを視覚化することにあるのでは?」と述べた。

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河尻亨一
[元「広告批評」編集長/銀河ライター主宰/東北芸工大客員教授]

1974年、大阪市生まれ。99年、早稲田大学政治経済学部卒業。お茶の水美術学院講師を経て、2000年より雑誌「広告批評」(マドラ出版)に在籍。08年、編集長就任。10年、同社退職後、雑誌・書籍・ウェブサイトの編集、企業の戦略立案およびPRコンテンツやイベントの企画・制作を手掛けるほか、講演活動なども行っている。

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