筆者は手数料が高すぎてリターンが低すぎる投資信託を個人退職勘定(IRA)にいくつか保有している。これらを処分して、手数料が安くリターンの高いインデックスファンドに切り替えようと思い始めてから、どれくらいたっただろう。

 約10年か15年、いや少なくとも20年だ。

 筆者は怠けていたせいで、リターンの高いファンドに切り替えていれば簡単に稼げたかもしれない数百ドル、おそらく数千ドルを手に入れ損ねた。

 しかし切り替えようと思うたびに、本棚の本を並べ替えなければとか、コンポストをひっくり返す時期だとか、足の爪を切らなければとか、他にもっと急いでやらなければならないことを見つけている気がする。

 「人間が集中できるのは短期間。だから現在という時間は私たちにとって非常に重要に思える」。セントルイス・ワシントン大学のシンシア・クライダー教授(心理学)はこう話す。「未来は現在ほど鮮明でも重要でもないように感じられるので、未来の自分を優先することは難しい」

 少なくとも筆者は今はなきステッドマンの投資信託には投資しなかった。悲惨なリターンが数十年続き、1990年代には多くの投資家は自分がステッドマンのファンドを保有していることすら覚えていなかった。そこからステッドマンのファンドに「デッドマンファンド」というニックネームが付いた。

 退職後に向けて貯蓄している人を対象にしたある調査では、100人に68人が貯蓄が十分ではないと回答した。このうち24人は今後数カ月の間に確定拠出年金401(k)の掛け金を増額する予定だと回答したが、実際に増額したのはたった3人だった。

 自分が置かれた環境が不透明だと感じれば感じるほど、この「現状維持バイアス」は強くなる。上昇中の株式市場が失速しそうであれば、物事を変えようという決意はもろくも崩れる。

 ではどうすれば怠惰を克服できるのだろう。

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