インスタグラムで“バズる”
私は、切り絵御朱印を再び出すことを決めると、過去に作ったものに何度も改良を重ねていきました。まずは紙選びからでした。紙専門店に行きさまざまな紙を見比べ研究しました。
その後、切り絵のデザインを決め1枚1枚手作業で抜いていきました。御朱印に入れる文字も、印刷ではなく1枚1枚手書きにしました。
デザイン御朱印は文字が元から印刷されたものを授与しているところが多かったのですが、やはり手書きの方が、ありがたみがありますし、何よりわざわざ来てくれた方に対して感謝の気持ちを示したいと思ったのです。
切り絵御朱印では、普通の御朱印にはない季節感を出したいと思ったので、四季に合わせ季節限定御朱印として年4回出すことも決めました。
2018年9月17日の敬老の日、季節限定御朱印として生まれ変わった、切り絵御朱印の授与を開始することにしました。告知は寺の公式インスタグラムとホームページで実施。インスタグラムは御朱印ファンの方々に情報を届けるチャネルとして非常に重要だと考えていたので、初詣後に工夫して徐々にフォロワーを増やしていました。
授与開始の前日、秋限定切り絵御朱印の告知を行いました。初詣の件もあり、すぐに人が来るのかは不安でしたがその不安は良い意味で裏切られました。
当日の17日朝の授与開始時刻から人が来てくれたのです。当寺では昔から普通の御朱印の授与を常時行っていましたが、1カ月に出る御朱印枚数は30枚程度、つまり1日1枚程度でした。
それが、午前中だけで10人を超える参拝者が来てくれたのです。そして皆口々に「かわいい」「すてき」という言葉を掛けてくれました。
しかも、来てくれた全員がインスタグラムを見たと言っていました。
私はこのときにインスタグラムの情報拡散力のすごさを実感しました。「これならいける!」私はそう確信しました。結局、発売開始から1カ月で切り絵御朱印は360枚ほど売れました。
それまでは1カ月30枚が平均だったわけですから10倍以上に伸びたことになります。翌月も参拝者は増え続け、御朱印の授与枚数も伸び続けました。12月には冬限定御朱印を出しましたが、これも好調でした。そこで、2019年の初詣にも初詣限定切り絵御朱印を出すことにしました。
これにより限定御朱印を求めて初詣に来てくれる人も増えると考えたからです。
2年目の初詣の準備も前年通り、ポスター貼りやチラシの配布など、全て先頭に立って行いました。
ポスターについてはあまり早く貼りすぎると、初詣前にはがされてしまうという前年の失敗もあったので、12月に入ってから短期集中で営業に行きました。ポスター営業範囲もさらに広げ前年度の1.5倍近い数の企業を回ることができました。チラシやポスターに加えインスタグラムでも計画的に、厄除けや開運の御祈願の告知や、お守りの御利益など細かくアップしていきました。フォロワーも増え続け初年度で3000人ほどに増えていました。
そして、2019年元旦に2度目の初詣を迎えましたが、前年度とは明らかに違うスタートでした。初詣大祈願祭開始前の早朝から限定御朱印を求めて並ぶ方もいて、駐車場にも朝から多数の車が止まっていました。確実に参拝者が増えていることは誰の目にも明らかでした。
去年は行列などできなかったお守り授与所にも、時折行列ができていました。「昨年の初詣からこの1年やってきたことは間違いでなかった」と、このとき感じました。まだまだ満足する参拝者数とはいえませんでしたが、2度目の初詣は手応えを感じることができました。
そこでさらなる成長を目指しさまざまな戦略を考えました。その中でも特に重視したのは、1.さらなる質の高い切り絵御朱印の制作、2.御朱印ファン以外のお寺ファンの獲得の2点でした。
1.の質の高い御朱印づくりについては、常に新たな技術を探しながら、参拝者様に喜んでもらう御朱印づくりのための研究を重ねました。
その研究の成果として出したのが、2019年の冬限定御朱印「世界に一つだけの輝き」です。この御朱印は雪の結晶を非常に繊細な切り絵で表現し大ヒットしました。
連日全国から多くの方が訪れ、土日になると大行列ができ、3~4時間待ちという状態になりました。ちょうどこの頃、ディズニー映画「アナと雪の女王2」が上映され雪の結晶が注目されていたこともヒットの助けになりました。またこの頃になると『御朱印さんぽ』(JTBパブリッシング)や「LINEトラベル」など、たびたびメディアにも取り上げられるようになっていました。中でもじゃらんの「2020年に訪れたい!『期間限定御朱印』9選 全国版」に選出された反響は非常に大きかったです。
2.の御朱印ファン以外の獲得については、ホームページやインスタグラムで当寺の由緒や、お守り、祈願(お札)について分かりやすい投稿を続けました。祈願は本格的で丁寧な祈願が受けられると評判になり、お守りも日を追うごとに授与希望の方が増えていきました。
そして2019年の年末には、Yahoo!より「大開運守り」についての取材もありました。このような良い流れで2019年は進んでいき、平日でも参拝者が常に訪れるようになっていました。
そして2020年元旦、3回目の初詣を迎えましたが、目の前に広がる光景に目を疑いました。本堂の準備が終わり、祈願祭開始1時間前の午前8時に外に出てみると、すでに御朱印を待つ大行列ができていたのです。9時になるとさらに長蛇の列となり300メートルほどになっていました。その他にも境内に入りきれないほどの人が押し寄せ、初年度は20台ほどしか埋まらなかった500台の駐車場も満車です。
厄除け・開運・方位除けを中心とした祈願も本堂に入りきれないほどになり、通常1時間で1回転のところを急きょ回転数を増やしました。
さらに当日の午前中には、年末にYahoo!より受けたお守りの取材の記事「遠出してでも手に入れたい!全国で人気の最強開運お守り10選」がネットでリリースされ、なんと当寺の「大開運守り」が日本一に選出されたのです。
この効果はすぐに表れ、ネット記事のリリース後すぐに電話での問い合わせが殺到し、午後になると「大開運守り」を求める参拝者が寺に押し寄せました。現場では大行列ができて、他の現場からスタッフを回しても全く追いつかない状態でした。この光景を見た私は、込み上げてくる涙を抑えることができませんでした。
初年度の2018年の初詣は、ほとんど人が入らずガラガラの状態でした。あのときの悔しさは今でも昨日のことのように覚えています。何もすることができず3日間ガラガラの境内に立ち続けました。
みんなに声を掛け気丈に振る舞いましたが、手伝ってくれている役員やスタッフに対する申し訳ない気持ちと自分自身の無力さに内心情けない気持ちでいっぱいでした。
そこから、わずか2年で今、境内は入りきれないほどの人で埋め尽くされている。この状態は3日間変わることなく続きました。3日間で10万人の参拝者が訪れました。2018年と比較すると2年で100倍の成長でした。
本当にあきらめずに努力を続けてきて良かった。心からそう思えた瞬間でした。この初詣の成功は役員やスタッフも非常に喜んでくれ、みんな笑顔で初詣を終えることができました。
この初詣で私は確かな手応えを感じることができ、当初の目標である10年で日本トップの参拝者数を誇る寺院を作るという目標が夢ではなくなったと感じました。また、地元の企業からも「何か一緒にやれないか」という声が掛かるようになり、最終目的である地方創生に向けた動き出しもできました。



