そして早大大学院発の起業へ

 埼玉厄除け開運大師の御朱印やお守りがさまざまなメディアに取り上げられるようになると、私の元には寺社仏閣の関係者から多数の問い合わせが来るようになりました。

 「今後の寺院経営に困っているので相談に乗ってほしい」「御朱印・お守りのデザイン、SNSの運用について知りたい」といったものです。

 現在、寺社仏閣業界は非常に厳しい状況に置かれており2040年までに40%近い寺や神社が消滅するといわれています。そんな中、自分自身の経験が何か役に立つのであれば、寺社仏閣業界の助けになりたいと考えるようになりました。

 また、寺社仏閣を観光資源という視点で見ると日本に欠かせないものです。特に、財源の少ない地方では商業施設などを新たに造ることは簡単なことではありません。しかし、寺社仏閣であれば、すでに全国に15万軒あります。5万5000軒のコンビニエンスストアの約3倍です。

 だからこそ、寺社仏閣は地方創生の主役にもなれると思いました。そこで、寺社仏閣を生かした地方創生によって日本を元気にしたいと思い、さまざまな仕組みを考えました。

 ちょうど、この頃MBA(経営学修士)取得のため、私は早稲田大学大学院に在籍していました。大学主催のビジネスプランコンテストに出場し、考えたビジネスモデルを発表したところ、優勝することができました。

 これがきっかけで、大学から事業化と出資の話をいただくことができました。そこで、2020年7月、大学院の仲間ら5人とともに「日本に、感動を。」というミッションを掲げ株式会社ELternal(エルターナル)を立ち上げました。最終的に大学側からは公認ファンドを通じて、学生出身者としては初の3000万円の出資を受けることができました。

 2021年の埼玉厄除け開運大師の初詣は、新型コロナウイルスの感染が拡大する中でしたが、感染対策を徹底した上で開催したところ、当寺の初詣客は前年比5割増の15万人を突破しました。コロナで全国各地の有名寺院の初詣客が前年比6~7割減となる中で、異例ともいえる大成功でした。

 そのような中、1月下旬に、世界文化遺産に登録されている京都の仁和寺様からELternalにコンサルティング依頼が舞い込みました。また、時を同じくしてトリップアドバイザーの観光地ランキング上位にランクインする、世界遺産の島、広島・宮島の大聖院様からも同様のお話をいただくことができました。

 さらに、埼玉厄除け開運大師のある地元・熊谷では、観光庁の実証事業として、寺社仏閣を軸にした面的観光資源開発のモデルケースづくりにも挑戦しています。

 創業1年も満たない会社に、日本を代表する名刹寺院様からお話をいただけたことや、観光庁の実証事業に採択いただけたことは大変光栄なことで、社員一同歓喜しました。私自身も、20年かけて自分自身がやってきたことが間違いではなかったと感じることができました。

 2021年3月末から両寺院様のコンサルティングがスタートしましたが、しっかりと期待にお応えすることができ、単月では前月比30倍の結果を出すこともできました。今後も寺社仏閣が受け継いできた、日本の伝統と芸術を後世につなぐお手伝いができればと思っています。

 そしてELternalは、5年以内の上場を目指しています。理由は、1000年以上の歴史を持つ寺社仏閣と関わっていく以上、我々も永続しなければならないからです。そのためには、高い社会的信用が必要です。事業を通じてパートナーの方々とより良い関係を築いていくことが必要です。さらに、寺院業界に継続的にイノベーションをもたらし、会社の将来を担っていく優秀な仲間を引きつけられる会社にならなくてはなりません。

 寺社仏閣はかつて、地域の人々の心のよりどころであるだけでなく、「寺請制度」「寺子屋」「駆け込み寺」といった言葉に名残があるように、人々の人生や生活のさまざまな場面に関わるかけがえのない存在でした。当社も寺院業界の改革の先において、日本社会のインフラとしての役割を担える会社にしていきたいと考えています。

TOP