ポスターやチラシを配布して挑んだ初詣、スタッフより少ない参拝客の数に意気消沈するしかなかった。だが、あきらめるわけにはいかない。そんな窮地を救ったのは、シュンペーターのイノベーション理論と稲盛和夫の言葉だった。地方創生を目指す“ソーシャルベンチャー”の創業までの苦節とは。(ELternal代表取締役社長CEO 小久保隆泰)
初詣で失敗、ドン底で気づいたことは?
思い立って半年、一心に準備をしてきた初詣の名称は「埼玉厄除け開運大師 初詣大祈願祭」とし、期間は1月1日午前9時~3日午後5時までの3日間としました。
「初詣大祈願祭」とした理由は、初詣だけでは集客をするのが難しいと考えていたため、厄除け・開運・方位除けなどの埼玉厄除け開運大師の強みである「祈願」もアピールするためでした。
2017年12月31日の大みそか。当寺では例年、除夜の鐘を開催していたため、今年は大みそかから混雑してしまうと思っていましたが、除夜の鐘は例年通り地元の参拝客がまばらに来るだけで、混雑はしませんでした。少し不安にはなりましたが、「初詣大祈願祭は明日からと告知されているから当然だな」と自分に言い聞かせました。
そして運命の2018年1月1日を迎えました。朝から天気も良く、9時前に全体の朝礼を終え、各現場にスタッフを配置して開始時刻を迎えました。駐車場も寺の駐車場が150台分ほどありましたが、この日のために近隣の農家の方から田んぼを借り、そこをローラーで踏み固め、追加で500台分の臨時駐車場も用意しました。
しかし、開始時刻の9時になっても全く人が来ません。最初の車が駐車場に見えたのが9時10分でした。私は元旦なので出足が遅いのかなと思いましたが、10時になっても11時になっても、駐車場には車がまばらに来るだけで、用意した500台の駐車場はほとんど埋まりませんでした。
私はぼうぜんとその場に立ち尽くすことしかできませんでした。
昼過ぎになり少し人は増えましたが、それでも常に参拝客よりもスタッフの方が多い状態が続きました。屋台やお守り売り場のスタッフもすることがなく、時間を持て余していました。
厄除けや開運・方位除けの祈願についてはある程度埋まりましたが、初詣客は数えるほどでした。
私はこのとき、現実の厳しさを知りました。そして自分自身の考えが甘かったことを痛感しました。結局この状態は3日間変わることはなく、合計参拝者数は1000人程度。手伝ってくれた役員やスタッフは「初年度だから仕方ないですよ」と言ってくれましたが、ただただ、自分の無力さを痛感し、申し訳ない気持ちになりました。
しかし、地方創生事業を始める際、人生を懸けて行うと自分で決めていました。いつまでもふさぎ込んでいても仕方ありません。