ビジネスモデルイノベーションを実現する“互恵の経済学”とは
ではそのロイヤルカナンが実践しているという“互恵の経済学”とは、どのようなものなのだろうか。
山本氏は“互恵の経済学”を「ビジネスモデルイノベーションのアプローチ、実践手法だ」と説明する。“互恵の経済学(Economics of Mutuality)”は、ロイヤルカナンの属するマースグループとオックスフォード大学の経営大学院が協働で開発したアプローチで、近年ではさまざまな企業や市場で取り入れられ、グローバルに広がり始めている。
“互恵の経済学”の根底には、「そもそもビジネス、企業の本来の目的というのは何か」という疑問があると山本氏は言う。
「金融資本主義が少し行き過ぎているのではないかといわれる中で、それが行き着く先に本当に企業は持続的に繁栄できるのか。というのは、ビジネス、企業が属する社会が破綻してしまえば、当然ながらそのビジネス、企業は成功も持続もできないからです」
こうした疑問を突き詰めていった先にたどり着いた考え方、それが「企業は自社の利益のみを追求するのではなく、地球環境やステークホルダーとの持続的な関係にも配慮し、さらに相互に利益が得られるような解決策を生み出す存在であるべき」というもの。この考え方が、“互恵の経済学”の基になっているという。
そして、“互恵の経済学”は、SDGs、ESG経営と以下のような共通点を持っている。
・ 社会課題の解決を意図する(地球環境、労働環境、多様性等への配慮)
・ 自社の利益のみを追求せず、連帯・パートナーシップの姿勢を取る
・ 持続可能な世界、社会、企業価値を目指す
その一方で、「ESG経営は企業経営上のリスク対応が主目的」であること、「SDGsはビジネスを行う上での必須目標」であることに対し、「“互恵の経済学“は企業の独自性、競争優位性を生み出すための実践手法」という点が異なると、山本氏は述べた。
「社会課題に対して、単に目標や責任、義務を果たすためのコストでは終わらせない。企業の財務利益と社会課題への価値創造を両立する」という点において、より実際のビジネス視点に沿った考え方であるということが特徴だ。
SDGsやESGに符合する取り組みとしては、ロイヤルカナンブランドとしては、2025年までにカーボンニュートラルを実現することを発表。フードの主な原材料である魚資源は、すでに100%持続可能な調達先を確保している。そして、受容性と多様性、人材育成を推進する働きがいのある会社としての評価を目指す活動を行っている。