“互恵の経済学”を実践するための4つのステップ

 では実際に“互恵の経済学”を実践するには、どのようにすればよいのだろうか。

「“互恵の経済学”を実践していくには、4つのステップが必要だ」とのこと。それは

 1. “Purpose/存在意義”を中心に据える
 2. パートナーとなるステークホルダーを再定義する
 3. ステークホルダーの“悩み(pain point)”をつかむ
 4. ステークホルダーと互恵のエコシステムを構築する 

 の4つ。これらのステップを、ロイヤルカナン自体がどのように実践しているかを山本氏は具体的に語ってくれた。

 まず第1のステップである「社会的に意義のある”Purpose/存在意義”を中心に据える」について。「ロイヤルカナンは『ペットは私たちの世界をより良いものにしてくれる』という確たる信念を持っています。しかし、ペットに関わる人たちに正しい知識・情報があるかというと、必ずしもそうでない印象があり、これがペットを取り巻く社会課題といえます」

 そこで、「ペットに関する正しい知識と適切な行動の啓発、個々の犬と猫で異なる栄養ニーズをきめ細かに満たすことで、一頭一頭の犬と猫の真の健康を提供する、それはつまり、ペットフードメーカーではなく、『犬と猫に“真の健康”を提供するヘルスカンパニーへと進化する』ということです」と山本氏は語る。

 次の第2のステップ「パートナーとなるステークホルダーを再定義する」ことについても、実際の事例から「自社の利益を中心と考えた場合のステークホルダーは、製品を買うペットオーナー、原材料を調達するサプライヤー、販売チャネル、マーケティング媒体となります。しかし、Purpose(=犬と猫に真の健康を提供する)を中心に置き換えてみると、従来のエコシステムでは実現が不可能だということが分かるのです」と述べる。

 山本氏は「ステークホルダーをもっと広く再定義し、犬と猫を取り巻くブリーダー、シェルター、NGO、動物病院の看護師・医師、獣医大学、ペットショップなど、関連するさまざまな方々と共同して取り組んでいかない限り、犬と猫の真の健康というのは実現できません」と語る。

 Purposeを変えることによって、自分たちが考えなければならないステークホルダーが変わってくるのだ。

SDGsともESGとも違う、企業の独自性・競争優位性を生み出す「互恵の経済学」とはPurpose(=犬と猫に真の健康を提供する)を中心に置き換えてみると関係性が広がる
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