幸せを定義する四つの因子とは
前野 幸せには、長続きしない幸せと長続きする幸せがあります。前者は金、モノ、地位など、他人と比べられる幸せ。後者は「ウェルビーイング」(well-being)といって、人々が、精神的、身体的、社会的に「良い状態」であることです。これには「心の要因による幸せ」が関わっています。
その因子は四つあって、①「自己実現と成長」(やってみよう因子)、②「つながりと感謝」(ありがとう因子)、③「前向きと楽観」(なんとかなる因子)、④「独立と自分らしさ」(ありのままに因子)です。
国連の国際幸福度調査(World Happiness Report)によると、先進国中56位(2021年)と日本は他国の後塵を拝しています。こんなに真面目で、健康で安全な国でありながら、四つの因子が足りない。ほとんどの人は病気ではないけれど、自己肯定感が低く元気がない。
実は、自己肯定感と幸せは相関があり、自己肯定感が高まれば幸せになれる、幸せな人は健康になるので、結果的に自己肯定感が高まれば健康にもつながるんです。
山田 先生のおっしゃる④の「ありのままに因子」は大事ですね。多くの人は比べる必要などないのに隣の人と比べて自己肯定感を下げてしまうんです。ただ、90年後半から00年代に生まれたZ世代は多様な価値観を当たり前に持っていますし、個人の尊重は、働く人の現場ですでに起こっている。自己肯定感はこれからの時代のキーワードだと思います。
幸せな社員は創造性が3倍、生産性が1.3倍。欠勤率や離職率も劇的に低い
前野 企業は社員の幸福を目指すべきです。幸せな社員は不幸せな社員よりも創造性が3倍高く、生産性が1.3倍高く、欠勤率は41%低く、離職率は51%低いという客観的なデータがあります。
企業には幸せになると利益が出ると考えてほしい。利益のために幸せを目指すうち、利益よりも幸せが大事と気付いていくのではないでしょうか。
幸せを目指せば、働きがい、働きやすさ、エンゲージメント、心理的安全性など企業が目標としている価値も付いてくるんです。今ウェルビーイングという尺度の評価を始めたり、Chief Well-being Officerがいたりする企業もあります。その役職にどれくらい重みを持たせられるかが勝負です。
山田 いずれにしても経営トップのコミットメントが重要ですね。