企業が社員の健康を考えるときの課題をテクノロジーで解決
――現状、企業の課題として健康経営を目指したくても、社員一人一人の健康管理の煩雑さ、専門家の不足、投資対効果の見えづらさなどの問題があります。
山田 そこでCarelyのサービスが生きてきます。健康診断やストレスチェックといった健康データを生かし、個別に一歩踏み込んだ提案をした方がいいことは分かっているものの、人事労務の部署だけでカバーし切れない。また今まではアナログな業務に忙殺されていました。例えば健康診断の予約・変更・取りまとめといった作業は、いまだに電話・ファックスを使っており、健康管理の担当者には多くの負荷がかかってしまいます。
これを健康管理のシステムとしてCarelyを使えば劇的に作業工程を減らすことができるのです。
さらに、データから組織の中で起きていることが可視化され、原因解明のアクションを取ることができます。
例えばですが、社員の中に妊活中の人が多くいたとして、社員視点では「妊活している事実を会社に知られたくない」と同時に、「会社から何らかの配慮が欲しい」という一見すると矛盾した本音が表れます。そこで匿名のサーベイ結果があれば、社員の中での要望が多いので卵子凍結サービスを導入するなどのアクションにつなげることができる。それこそが働く人それぞれの個人の価値観を尊重するために必要なツールとしての意義も付加されるのです。
ただ、現状、人事がシステムを欲しても経営者にぴんときていないケースがあって、それはわれわれの訴求不足かもしれません。
経営者はテクノロジーで、個々人のニーズや価値観を捉え、企業の施策として戦略を練る。それでこそ従業員に支持されるし、結果的に働く人の健康をつくり、事業成長にもつながるというストーリーをもっと広めなければならないと思っています。
一方で、社員側には個人に特化した最適情報を届けることで、健康行動に結び付けたいと考えています。人は自分ごとの情報でないとなかなか行動できません。先ほど前野先生がご指摘していた通り、健康は幸せにつながるので、健康と幸せを広げて、日本を良くしたいし、自己肯定感が低い人をハッピーにしていきたいですね。
前野 人事の持つデータと医療データをクロスさせるなどパーソナライズしたデータはまだ活用されていませんが、健康経営、幸福経営にとって宝の山です。今後「もうける」ための技術を「より幸せになる」に振り向け、利益を出すウェルビーイング産業が爆発的に成長することは間違いないです。
山田 われわれも、まずは組織を集団として捉え、最適な情報を届けるところに傾注しています。Google、Appleを筆頭に国際的なIT企業はすでにもう着々と手を付けていますね。
前野 外資系企業がよく言っているウェルビーイング、心理的安全性やマインドフルネスも、もともとは日本や東洋にあったものですよね。