蓄積したノウハウを
中小企業のM&Aにも適用

 これまで大手会計事務所で積み上げてきたM&Aノウハウは、中小企業の取引にも適用できるものなのだろうか。

 遠藤代表は、「M&A取引の根底にあるファイナンス理論の常識的な考え方は、“お作法”のようなもので、企業規模・取引規模に関係なく適用できるし、適用されるべきです」と話す。

 最近の業界の潮流としては、中小企業の事業承継などを目的に、仲介業者によるM&Aが活発だという。それについて遠藤代表は「双方の企業に関わり双方から手数料を得る(両手取りと呼ばれる)ことで、仲介業者の利益相反の問題が指摘されています。また、昔ながらのプライベートな株式売買の慣習から抜け切れていない仲介業者も多く、会社の評価方法がファイナンス理論に基づいておらず、グローバルには常識的なM&Aの“お作法”にのっとっていないものや、双方の企業にとってより良い取引スキームがあるにもかかわらずそれが採用されていない取引が見受けられる」と、中小企業向けのM&A業界に対して歯がゆい思いを抱いているという。

 だからといって遠藤代表は、中小企業の取引に“お作法”を押し付けるつもりはない。

「M&Aに20年近く関わってきた者として、どのような利害関係者がいて、どのような規模の取引であれば、“お作法”を意識することが必要かということも理解しており、逆に、どのような取引であれば昔ながらの慣習に基づいてもよいか、状況に応じたアドバイスができると自負しています。その上で私たちは、専門家として、理論的な考え方を基礎に正しい財務分析に則って、お客さまの利益保護・価値創造へつながるサービスを提供していきます」と同社の姿勢を強調する。